10月11日 夜の台北
【夜の台北】
・桃園駅から区間快速に乗って台北まで約1時間。ずっと混んでいた。
・歩きづめで疲れたし、言葉が分からないからストレスも少々たまっているし、買い食いばかりでまともな食事はしていないかったし、がっつり食いたいと思って鼎泰豊へ。本店は混んでいるから忠孝敦化店に行く。行列してはいたが、お一人様席は空いていたようで、すぐに案内された。ここは日本語が通じるからラク。食うぞ、とばかりに注文すると、「量がかなりあって一人では食べ切れませんよ」と一々注意を受ける。そのことは織り込み済みで、とにかくたくさん食いたかったのだが、助言に従って注文をしぼる。小籠包、炒飯、スーラー湯の小、台湾ビール。
・忠孝敦化站の大通りから裏手に入った通りには結構色々なレストランが並んでいる。酔い覚ましがてら歩き、誠品書店敦南店へ。ここは24時間営業。棚をゆっくり見ながら選書、何冊か買い込む。なぜか松本清張生誕百周年記念特集と大江健三郎特集が目立った。
・まだ夜の八時。このまま宿舎に戻るのももったいないので、夜の台北散策へ。MRT台北駅で地上に出て、台湾博物館やライトアップされた総統府(旧台湾総督府)などを見ながらかつての“城内”を南下する。“城内”は南北を普通に歩いてだいたい30分程度。中山堂(旧台北公会堂)の脇を通って西門町へ。イベント開催中の西門紅楼をぐるっと回って、萬華の方向へ足を向ける。徐々に人通りがさびしくなってきた。女性に道を尋ねられたが、私が視線を泳がせると、分からないものと判断したようで、目の前にあったコンビニに入っていった。
・青山宮の前にさしかかった。通りがかりの若い人が廟堂に向かって深々とお辞儀していたので、私もそれに倣い、手を合わせて深く一礼。『民俗台湾』の池田敏雄がこの青山宮に一時期下宿していたことは最近知ったばかりだ。
・さらに進むと、華西街観光夜市のアーケードに出る。他の夜市と違ってここの特徴は、いかがわしいお店がちらほら目立つこと。横道にそれるとスナック、バーといった感じの飲み屋街になっている。陽気にカラオケを唄う声が聞こえてきた。夜9時過ぎ、北の入口の方は閑散としていたが、龍山寺方向の道と交差するあたりは人があふれかえって活気がある。尼さんが何人か買い物をしているのを見かけた。
・十字路の龍山寺に通じる東西方向の活気とは対照的に暗い南方向へと華西街をさらに進む。女性たちがたむろしている。おそらく、売春街。薄着に濃い化粧、みんなかなり年増。きれいな人はいない。横道に入って店に視線を向けると、奥に個室が並んでいて、入り口脇の待合席に客とおぼしき男性が座っている。女性が寄ってきて声をかけられ、無言で手を振って歩いていくと、背後から悪態をつく声が浴びせられた。治安は良くない雰囲気なので足早に立ち去った。
・龍山寺の境内に入った。夜中まで参詣できるようだ。人々がお線香を振る姿をしばし眺める。外壁に彫刻や銘文が刻まれており、何となく眺めていたら、尾崎秀眞の揮毫を見つけた。尾崎秀実・秀樹兄弟の父、漢学者である。日本の台湾占領にあたり、漢詩文の教養のある人物がいないと侮られるとのことで招かれたらしい。以前、『台湾時報 総目次』で戦争中の項目を調べていたら、尾崎秀眞の肩書きが「無職業」となっていたのを思い出した。ゾルゲ事件で息子が処刑されて、秀眞は謹慎中という事情。尾崎秀樹は当時中学生だったが、兄が処刑されたので肩身が狭く、自分の将来もおしまいだと悲観。どうやって暮らしていこうか、医学標本室の整理係でもしながらひっそり隠れて生きていこうと考えて、父の紹介で台北帝国大学医学部の金関丈夫の研究室を訪れた、と回想していた。
・龍山寺駅からMRTに乗って西門町に戻る。若者が闊歩する繁華街をぶらぶら歩き、映画街へ。24時間営業のシネコンが並ぶ。予告の看板やヴィジョンを眺める。「風聲 the message」なる映画はどうやら抗日戦争ものらしい。「原子小金剛」は「鉄腕アトム」。CG映画化されるなんて知らなかった。「福音戦士」は「エヴァンゲリヲン」。16日から公開。西門町の大型ヴィジョンにシンジくんや綾波レイなどが映し出されていた。どうでもいいが、MRT西門町駅に降りる階段脇にアディダスの広告がでかでかと貼り出されており、ジャージ姿の楊丞琳という女の子がかわいくて、通りかかるたびについつい見とれてしまった。ほっぺのほくろがチャームポイント。
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