10月10日 新竹へ
【出発】
・先週、連休を使ってちょっと台湾へ。成田10:00発(日本時間)→桃園12:30過ぎに着(台湾時間)のJAL。
・今日は国慶節だからか、あちこちで青天白日旗が翻っていた。高速バスで台北駅まで出てMRTに乗り、西門駅へ。宿舎にたどり着いたのは15:00頃。西門町のど真ん中、駅を出て3分ほど、路地を少し入ったところ。立地条件が良い割りに料金は安かったが、窓のない部屋だった。寝るだけだからいいか。
【新竹へ】
・新竹へ行く。台北15:30発→新竹17:02着の莒光号。一応、車内に携帯電話の使用はお控えくださいという注意書きはあるが、携帯電話の声が無遠慮にとびかう。
・車窓の風景をぼんやり眺めるのが好き。青々とした草はらに木立の光景が見えた。ふと、侯孝賢監督「冬冬の夏休み」のワンシーンを思い浮かべた。あれは苗栗が舞台だったとは思うが、風景としては続いているのだろう。
・新竹の駅舎は日本統治期の建物を現在でも使っている(上の写真)。駅前にはイベントができる広場があり、屋台も並ぶ。線路があった。かつての軽便鉄道か何かの跡だろうか。花蓮でもかつて軽便鉄道だった線路跡をそのまま細長い公園に整備されているのを見かけたことがある。
・まず、李澤藩美術館に足を運んだ。開館は金土日の18時までということは事前に調べてあった。李澤藩(1907~1989年)は水彩画家である。彼については以前にこちらで触れた。新竹駅から歩いて5分ほど、繁華街の大通りに面した建物の3階。かつて李の自宅のあったところらしい。他の階にはテナントが入っており、階段をのぼる途中の2階には若者向けのヘアサロン。写真で煌々と明かりがついているのがそれだ。
・芳名帳に記入して入館。アマチュア向けの賞の入選作の展覧会をやっていた。地元の美術サロンという位置付けか。李澤藩自身の作品は片付けられて数点しか見られなかった。奥の方で遺品の展示。画架や書棚、集めていた小物など。書棚は台北師範学校在学中に自分で作ったものらしい。
・街を歩く。新竹市政府。日本統治期の新竹州庁の建物を現在でも使っている。城隍廟の方へ歩いていく。ちなみに、城隍廟とは町の守護神を祀ったところ。屋台が並んでいると聞いていたが、時間が中途半端だったせいか、人通りはあってもいわゆる活気がない。迎曦門に戻る。前に広場があり、若者のバンドが大音響を出していた。
・新竹市立映画博物館。戦前、有楽座という映画館だったが、戦争中に爆撃を受け、修築されて国民大戯院となり、その後、打ち棄てられていたのを改装して博物館として利用されている。ミニシアターも併設されているようだ。建物の脇には、映画関連の事項を中心に新竹の歴史をまとめた年表や映画ポスターのパネル。1941年には李香蘭も来たらしい。肝心の博物館は、開館時間中のはずなのに、休息中の札がかかったまま。ひょっとして祝日だから休館なのか。仕方ないので引き返す。
・風が強く、ゴミが目に入った。雲行きは怪しく、たまに小雨がぱらつく。
・19:01発の自強号で台北に戻る。屋台でビーフンでも食べようと思っていたのに、気持ちの引かれる店が見つからず、小腹が減ったので、列車待ちの時間に駅のセブンイレブンでサンドイッチ。パッケージは日本と変わらず。パンは若干パサパサ、ハムの味が違う。列車の中で明日のスケジュールを組む。
【夜の台北】
・20時頃、台北駅に到着。MRTに乗り換えて市政府駅で下車。誠品書店信義旗艦店へ。私は台北に来たら必ずここに寄って時間をつぶす。
・いつも上の5階から順次下へ降りていく。5階は子供用品フロアだが、絵本売場をチェック。酒井駒子さんの絵本が何冊か翻訳されており、ちょっとした特集が組まれていた。
・4階は芸術フロアである。日本語コーナーも、アート・ファッション系の本が中心なので、このフロアで美術書コーナーとCDコーナーとに挟まれている。美術書コーナーの新刊平台に並んだ翻訳ものでは安藤忠雄と森山大道が目についた。
・3階は人文・社会科学フロア。ここで台湾史関連の書籍を買い込む。先日読んだばかりのJonathan Manthorpe, Forbidden Nation: A History of Taiwanの中文版が文達峰(柯翠園訳)《禁忌的國家──台灣大歴史》というタイトルで新刊平台に積まれていた。フランツ・ファノン『地に呪われし者』の翻訳(中文タイトルをメモするのを忘れた)やファノンの評伝が新刊で出ているのも目についた。ここしばらくポストコロニアルの視点で台湾史を議論するのが定着しているようだから、そうしたところから需要があるのか。龍應台《大江大海 一九四九》(天下雑誌、2009年)は話題になっている様子なので購入。
・2階は新刊フロア。ざっとベストセラーの棚を眺めて引き上げる。
・MRTで西門駅に出て、明朝足をのばす予定の大渓行きバスの停留所を確認してから、西門町を少しブラブラ。
・腹へったなあと思いながら歩いていたら、阿宗麺線というお店の前を通りかかった。みんな店の前で立ち食い。つられて私も行列に並ぶ。一品しかないようで、すぐ順番がきた。大椀55元を注文。細麺というか、にゅうめんのような感じで、かつおだし風味、とろみのあるスープ。アツアツをレンゲですくってハフハフしながらかき込む。亭仔脚の脇の台に調味料が置いてあり、好みの味に調整してもよし。箸が欲しいなあと思いつつ、レンゲでほおばっていると、屋台を引いたおっちゃん、おばちゃんたちがワイワイ騒ぎながら目の前を走っている。どうやら、巡回パトカーが来たらしい。西門町名物、屋台と警官のいたちごっこを眺めながら麺線を平らげた。
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