「女の子ものがたり」
「女の子ものがたり」
行き詰って編集者にせっつかれている漫画家が目前の現実から逃避するように少女時代を振り返る。──海の見える田舎町、貧しい生活の中、周りの大人たちを見て、半ば当然のように半ばあきらめたように「自分もああなるのかな」と漠然と思いながら、それでも自分の道はきっとあるはずだともがいていた日々。バスに乗ったり、自転車に乗ったり、遠くへ行くシーンの開放感にそうした感傷が重ねあわされる。
原作は西原理恵子。人間が業として抱えているとしか言いようのない汚らしく醜い猥雑さの中でもほのかに浮かび上がってくる切なさ、しんみりした哀愁、それが西原作品の魅力だと思っている。この映画の場合、演じている女の子たちがみんな結構かわいいので「貧乏!」「汚い!」と言っても全然ピンとこない。生きていく悲哀をそのまま残酷にさらけ出すストーリーのどぎつさを西原さんの雑な絵柄はうまくやわらげているのだが、その微妙な勘所を映像で表現するのはなかなか難しそうだ。脚本は原作を踏まえて構成されてはいるが、少女時代をいとおしく振り返るノスタルジックな眼差しそのものにテーマが置かれている点でむしろ別な作品だと割り切って観る方がいいかもしれない。
なお、西原作品については、「西原理恵子『ぼくんち』」「西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』、他」「最近読んだマンガ」でそれぞれ取り上げたことがある。
【データ】
監督・脚本:森岡利行
原作:西原理恵子『女の子ものがたり』(小学館)
出演:深津絵里、大後寿々花、福士誠治、波瑠、高山侑子、森迫永依、板尾創路、奥貫薫、風吹ジュン、他
2009年/110分
(2009年9月11日レイトショー、角川シネマ新宿にて)
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