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2009年9月 7日 (月)

寺島実郎・飯田哲也・NHK取材班『グリーン・ニューディール──環境投資は世界経済を救えるか』、ヴァン・ジョーンズ『グリーン・ニューディール──グリーンカラー・ジョブが環境と経済を救う』

寺島実郎・飯田哲也・NHK取材班『グリーン・ニューディール──環境投資は世界経済を救えるか』(NHK出版生活人新書、2009年)

・NHKの番組で取り上げられたテーマをまとめた内容。特にアメリカでの取り組みを紹介。
・太陽光発電、風力発電、電気自動車など化石燃料に頼らない技術を紹介。自然エネルギーによる電力供給は小規模・分散型で不安定だが、IT技術によって発電量を把握・コントロールするスマート・グリッドが注目される。
・ブッシュ政権は京都議定書から離脱。しかし、州レベルでは環境政策への取り組みがあり、そうした動きをオバマ政権は取り込んだ。オバマ政権は、化石燃料依存から脱却するエネルギー構造転換への投資を雇用創出(例えば、戸別にソーラー・パネル設置・メンテナンス、風力・潮力発電所の建設、断熱化工事など)に結び付けるグリーン・エコノミー政策を推進。
・産業政策と環境政策とでは意見がぶつかりやすいが、その両立を目指す。

ヴァン・ジョーンズ(土方奈美訳)『グリーン・ニューディール──グリーンカラー・ジョブが環境と経済を救う』(東洋経済新報社、2009年)

・著者のヴァン・ジョーンズの名前は上掲NHK取材班の本にも出てくるが、アメリカの著名な社会活動家。オバマ政権のアドバイザーとしてホワイトハウス入りしたらしい。
・本書の主張の一番の特色は、エコの不平等、環境による人種差別という問題意識だろう。劣悪な居住環境、ジャンクフード等による不健康、ハリケーン・カトリーナの被害は黒人や貧困層に集中した。従来の環境運動は富裕層の余暇活動的な側面があった。彼らは生活に困っていないので、熱帯雨林の消滅やホッキョクグマの溺死など外の地球環境問題に関心を寄せる余裕がある。身近な環境問題にも目を向けて、一般の人々全体の生活水準を高めるため、エコ・エリート主義を超えてエコ・ポピュリズムへという問題意識。ただし、両者を対立関係で捉えるのではなく、立場の異なる者同士が協力すべきという視点。マイノリティーや貧困層もグリーンカラー・エコノミーの運動に巻き込んでいく必要を主張。環境政策+経済政策+社会政策というトータルな視点。
・生活に直結する環境問題→エネルギーだけでなく、食物、水、ゴミ、輸送インフラなど様々な問題。
・グリーン投資によって創出される雇用:グリーン・ジョブ→職業訓練→貧困層の生活上の自立につなげる。
・フランクリン・ローズヴェルト政権がニューディールで経済危機を切り抜けたように、グリーンカラー・エコノミー政策でも整合性のとれた包括的プログラムによって官民ともに社会全体で問題解決を図る→政府のリーダーシップが必要。

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