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2009年8月 8日 (土)

「モノクロームの少女」

「モノクロームの少女」

 廃校となった中学校、人の気配がなくなってほこりにまみれた美術室で見つけた、一枚のモノクロームの写真。写っているのは、ショールをはおって憂いを帯びた眼差しでこちらをみつめる美少女の姿。この人は誰なのだろう? 知っている人がこの村にいるのだろうか? 関係者探しに、少年少女の淡い三角関係も絡まって物語は進む。

 筋立ては陳腐と言ってしまえば陳腐。少年少女役もどこかぎこちない。だけど、この映画の主役は、むしろ農村風景が様々に見せる穏やかな表情だろう。映画の中で美術の先生が言うように、田畑作業のつらさを知らない人間の押し付けがましい感傷に過ぎないのかもしれないけれど、この落ち着いた雰囲気には素朴にいとおしさを感じる。ストーリーの陳腐さも、少年少女のぎこちなさも、すべてこの中に包み込まれる感じで、そこから漂っているほのかなノスタルジーが私は結構嫌いじゃない。

 舞台は新潟県の栃尾(ちらっと油揚げの話題が出るのはこのためか)。中越地震のシーンも物語に織り込まれている。

【データ】
監督・脚本:五藤利弘
出演:寺島咲、入野自由、川村亮介、大杉漣、大桃美代子、モロ師岡、加藤武、他
2009年/99分
(2009年8月7日レイトショー、渋谷シアターTSUTAYAにて)

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