「美代子阿佐ヶ谷気分」
「美代子阿佐ヶ谷気分」
ほとんど予備知識なしに観にいったのだが、むかし『ガロ』誌上で一定の支持を集めていた安部愼一という漫画家の話。同棲相手である美代子との関係を描いた私小説的な作風で、この映画もそれに基づく。こういう無頼派的な作家というのも今では見かけないな。自分の生身の経験を描きたいという自我へのこだわり、美代子との関係を断ち切りそうでいながら強い執着を見せるあたり、一種の共依存か。
1970年代の東京の風景、その中でウェットに気だるい情感の漂うシーンがところどころあって、なかなか悪くないと思う。ただし、私はもう世代が異なるせいだろう、共感の糸口はつかめなかった。そうか、むかしはこういう青春を過ごした人たちがいたのか、しかし時代は変わったんだなあ、と思いながら観ていた。私の場合、むしろ乾いた倦怠感の方に真実味を感じるタイプなのだが、世代間のこうした感覚的な違いそのものが社会学的考察の対象になるのではないかという気もする。
【データ】
監督:坪田義史
原作:安部愼一
出演:水橋研二、町田マリー、佐野史郎、ほか
2009年/86分
(2009年8月2日、渋谷、シアターイメージフォーラムにて)
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