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2009年8月30日 (日)

ジェラルド・カーティス『政治と秋刀魚』『代議士の誕生』

ジェラルド・カーティス『政治と秋刀魚──日本と暮らして四五年』(日経BP社、2008年)。

 1960年代、語学留学で東京へ来て以来、日本と付き合い続けながら感じたこと、考えたことを振り返る。西荻窪に下宿、もともと魚介類は好きではなかったが、大衆食堂で食べた鯖や秋刀魚が舌に馴染んだという味わい深いエピソードでつづられる出だしがなかなか良い感じだ。社会科学者としての視点から日本社会の価値観の変化という現実に政治が対応できていないことを指摘する一方で、来日したばかりの頃に知った親切で穏やかな日本への愛惜の念も時折ほのかににじむ。地域研究というのはこういうウェットな感性があってはじめて成り立つものだとつくづく感じる。

 “ドブ板”で選挙民のニーズに敏感な党人派と政策立案に長けた官僚派が互いに協力・牽制しあいながら調整のバランスをとってきたことが自民党政治成功の要因だが、こうした調整メカニズムが機能不全に陥っている、日本独自の政党政治の伝統を生かしながらいかに「説得する政治」を構築できるかが課題だと指摘する。自分には不合理で理解できないことであっても、それを安易に文化論に結び付けて逃げてしまうのは良くないという指摘も大切なことだと思う。

 ジェラルド・カーティス『代議士の誕生──日本式選挙運動の研究』(山岡清二訳、サイマル出版会、改版1979年)はもはや日本の政治文化論として古典。自民党新人代議士の選挙運動に密着して、文化人類学的なフィールドワークによって日本の“草の根”政治の分析を試みた博士論文である。本書で分析されている後援会や地方政治家を通した政治家個人への人間関係による集票システムは、『政治と秋刀魚』でも指摘されているように、すでに崩れている。選挙というイベントからは、その社会における人間関係や組織のあり方、それらに通底する価値観が浮かび上がってくる。日本社会の価値観の変化を考える際の参照基準として選挙を位置付けるという観点から読み直してみると、現代なりに面白い論点も浮かび上がってくるのではないか。

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