「縞模様のパジャマの少年」
「縞模様のパジャマの少年」
街にカギ十字がはためく戦時下のドイツ。緊迫した空気が漂うが、子供たちは相変わらず元気にはしゃいで飛び回っている。お父さんの転勤が急遽決まり、友達と離れ離れにならねばならないブルーノは不満顔。新しいおうちは退屈なので裏庭から冒険に出ると、川を渡った向こうに鉄条網で囲われた“農園”があった。ブルーノはそこにいた同い年の少年と仲良くなる。だけど、この“農園”、どこか様子が変だ。みんな縞模様のパジャマみたいな服を着せられて、態度も怯えたようにオドオドしている。高くそびえる煙突から時折吹き出す煙はものすごく嫌な臭い──。お父さんはここの“所長”をしているらしい。制服に付けられた徽章はゲシュタポのドクロマークである。
家に出入りする中尉はユダヤ人の囚人につらくあたる。彼の父親はナチスに反対して国外亡命したという。彼の冷たい無表情も、ユダヤ人への暴力も、反ナチスの父親を持ったことで自分も破滅するかもしれないという恐怖心に由来する、一種の“抑圧の移譲”であろうか。
ブルーノの無邪気さに偏見はなく、だからこそユダヤ人の少年とも友達になれた。だが、彼の無邪気さは同時に、ホロコーストの事実を知っている後世の我々の眼には時に残酷にも映る。所長邸の用役に来ているユダヤ人元医師の無念、ブルーノの何気ない一言を聞いて、絶望と悔しさとで表情が悲しく歪むシーンが忘れられない。この映画の結末をここで明かすわけにはいかない。ただ、純真さは同時に無知でもあり、その無知こそが事態を破滅に追い込みかねない、この映画の結末はそうした一つの寓話としてほのめかされているようにも思われる。
【データ】
監督・脚本:マーク・ハーマン
2008年/イギリス・アメリカ/95分
(2009年8月22日、恵比寿ガーデンシネマにて)
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