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2009年8月22日 (土)

「宇宙へ。」

「宇宙(そら)へ。」

 ロケット打ち上げの炎と噴煙には独特に激しい厳かさがある。映画が始まって間もなく、打ち上げに失敗したロケットの爆発シーンが立て続けに映し出される。その後も、有人宇宙飛行、宇宙遊泳、月面着陸、スペースシャトルと成功が続くものの、そうした華々しさの陰で目の当たりにされた訓練中の爆発事故、チャレンジャー号の打ち上げ失敗、そして帰還途上にあったコロンビア号の空中分解といった大惨事。文字通り死と隣り合わせの冒険に敢えて飛び立った宇宙飛行士たち。NASAが記録していた映像を編集してアメリカの宇宙開発の歴史をまとめたドキュメンタリーである。

 自らの命を代償にしてでももこの眼で確認したかった宇宙の姿、未知なるもの。静けさを湛えた月のゴツゴツした地平に、漆黒の闇の中からくっきりと浮かび上がった地球の青さ──。もはや写真や映像で見慣れたシーンではあっても、科学者や宇宙飛行士たちの命がけの奮闘を念頭に置いて見ると目頭が熱くなってきて、その印象はひときわ鮮やかだ。ハッブル望遠鏡に映し出された、計算を絶した時空の果てからやって来た星々の光線。宇宙のはるかな深淵に、振り返って我ながら陳腐とは思いつつも、永遠と有限という哲学的テーマが頭をよぎる。だが、あの映像を目の前にしている時には不思議とそれが陳腐には感じられなかった。胸に清涼感があふれてくる。凄絶におそろしく、そのおそれが美しい。命を棄ててでも見たいと切迫した思いを募らせるのは果たしてこれか。

 記録映像をつなぎ合わせただけだが、ドラマとして張りつめた緊張感が全体に漲っている。ドキュメンタリーを観てこんなにワクワクドキドキしたのは久しぶりだ。オーケストラのバックミュージックが雰囲気を盛り上げていたし、ナレーションを務める宮迫博之の渋いバリトン・ヴォイスもなかなか様になっていた。

【データ】
原題:Rocket Men
監督:リチャード・デイル
翻訳・演出:寺本彩
翻訳監修:毛利衛
日本版ナレーション:宮迫博之
2009年/イギリス/98分
(2009年8月21日レイトショー、新宿・武蔵野館にて)

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