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2009年8月18日 (火)

8月某日 佐渡(2)(郷土博物館、土田杏村、北一輝、本間雅晴)

(承前)

◇第二日
【キーワード】郷土博物館、土田杏村、北一輝、本間雅晴

・両津港のレンタカー案内所に行って予約していた車を借り出し、ドライブ開始。
・海沿いの道路を北上。海と山とが迫っており、ところどころ小さな漁村がへばりついている。走りやすい道路で、車の通行量も少なく、ついスピードを出してしまう。朝から曇り空だったが、佐渡島北端を回るあたりでたたきつけるように強い雨風に変わった。岩肌がゴツゴツと険しく、波も高く、これぞ日本海!と妙にワクワクしてしまった。グルッと西海岸に回り込み、相川に着いた。ここまで、ほぼ2時間。
・昨日、バスで通った佐渡金山方面へ進路を変え、大佐渡スカイラインに入る。濃霧が立ち込めて視界不良、3~4メートル先は全く見えない。スピードを落とし、ライトを点灯。
・やがて防衛省管轄のエリアに入った。重量車両の通過も可能にするためか、道路の舗装はがっしりとしている。比較的新しい感じだ。自衛隊のレーダーがあると聞いた。北朝鮮のミサイルを想定した防空システムの一環であろう。
・国仲平野の中ほどに降りた。平野部に来ると、曇天だが小雨がパラつく程度。

・順徳上皇ゆかりの黒木御所へ行く。佐渡を訪れた俳人・歌人の文学碑がたくさんあった。すぐ近くに金井歴史民俗資料館という看板のぼろい建物があったが、やっていない。休館というのではなく、そもそも人の手が入らなくなって久しいという感じの廃れ具合。
・日蓮ゆかりの妙照寺。
・お昼時。昨日、タクシーの運転手さんから、「佐渡では回転寿司に行ってみなさい。安くておいしいよ」と言われ、教えてもらったお店が近くなので行った。行列。地元でも評判の店らしい。一時間ほど待たされたが、満足。
・順徳上皇の王子・姫の墓所をまわる。いずれも田んぼの真ん中にひっそりとたたずんでいた。大佐渡山脈を望むと、山の頂には雲がたなびいている。あそこから降りてきたわけだ。屏風のように連なる山並みを背景に田んぼの広がる風景は、とても島とは思えない。
・阿仏坊妙宣寺。日得上人の開基。日得は、流されてきた順徳上皇に仕える北面の武士だったらしいが、後に日蓮に帰依。五重塔が目玉。現在の場所はもともと本間氏の居城の雑多城(そうたじょう)だったが、佐渡が上杉景勝の軍勢に占領された際、阿仏坊をここへ移転させたという。直江兼続が奉納したという槍の穂先がドラマ「天地人」に合わせて公開されていた。正中の変で流された日野資朝の墓もある。資朝は本間氏によって誅殺されたらしい。
・日蓮ゆかりの根本寺もまわる。

・新穂歴史民俗資料館。民俗資料のほか、織物や人形(文弥人形、説経人形、のろま人形)の展示が目を引く。都から流されてきた文化人が多かったせいか、佐渡は他所に比べて人形劇や能などの芸能が著しく盛んだった。
・土田麦僊・杏村の兄弟はここ新穂の出身。ある事情があって、土田杏村についても調べようと考えていたのだが、未着手。戦前、文化主義の思想家として知られていたが、40代で病死している。農村での自治的な民衆教育機関として組織された信濃自由大学に関わっていたので、てっきり信州の人だとばかり思い込んでいたのだが、佐渡の出身だと知ったのはつい最近のこと。彼の晩年の著作『現代世相論』の生原稿が展示されている。館の職員の方にことわった上でデジカメに収めた。
・近くの新穂小学校に土田麦僊・杏村兄弟を記念したレリーフがある。

・両津郷土博物館。ここは大きくてきれいな建物だ。民俗資料、考古資料、自然史と一通りそろっているが、とりわけ漁撈関係の展示が充実している。佐渡島の位置からして当然に漁業が中心だし、海洋交易の一つの拠点であったろうことも想像に難くない。
・歴史展示の終わりの方には、北一輝と本間雅晴にまつわる展示。北一輝の色々な意味で有名な『霊告日記』。北が見た夢を二二六事件の時まで毎日スズ夫人が書き留めたもので、『霊告日記』という呼び方は松本健一氏による。清書された原本が展示されており、開かれたページは、順徳上皇によるお告げのくだり。
・本間雅晴の「愛国心」と大書された掛け軸。佐渡には本間姓が多いが、彼もそうした一族の出身か。文学的素養の深い軍人として知られたが、戦後、B級戦犯として処刑された。旧制中学出身で陸軍士官学校に進んだ一期生である。角田房子『いっさい夢にござ候』(中公文庫)を参照のこと。

・両津港でレンタカーを返し、ジェットフォイルに乗船して新潟へ戻る。特急いなほ号で酒田へ。海側の窓際に座れたが、もう夜なので車窓の風景を眺められなかったのが心残り。駅の売店で買った新潟の地ビールを飲み、お米でつくられた新潟チップスをかじりながら、庄内平野での行動プランを練り、それから森敦『月山・鳥海山』(文春文庫)を読む。

(続く)

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