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2009年7月30日 (木)

ウルリッヒ・ベック、アンソニー・ギデンズ、スコット・ラッシュ『再帰的近代化──近現代における政治、伝統、美的原理』

ウルリッヒ・ベック、アンソニー・ギデンズ、スコット・ラッシュ(松尾精文・小幡正敏・叶堂隆三訳)『再帰的近代化──近現代における政治、伝統、美的原理』(而立書房、1997年)

・かつて啓蒙主義は世界の認識→理想・目的に向けて統御可能という信念を持っていた。ところが、再帰的近代化:社会の近代化→自らの存在の社会的諸条件を省察→条件を変えていく→工業社会の意図していなかった潜在的な脱埋め込みと再埋め込みの過程→人間の知識が増大したからこそもたらされる不確実性。

ウルリッヒ・ベック「政治の再創造」
・「私のいう再帰的近代化とは、発達が自己破壊に転化する可能性があり、またその自己破壊のなかで、ひとつの近代化が別の近代化をむしばみ、変化させていくような新たな段階である。」「…再帰的近代化とは、通常の自立した近代化が、また、政治と経済の秩序に一切影響を及ぼさずに、内密に、無計画に進行する工業社会の変動こそが、工業社会の諸前提と輪郭を解体し、もう一つ別のモダニティへの途を切りひらくモダニティの《徹底化》を含意していると考えることができる。」
・「リスク社会は、みずからが及ぼす悪影響や危険要素を感知できない、自立した近代化過程の連続性のなかに出現していく。こうした過程は、工業社会の基盤を疑わしくさせ、最終的にその基盤を破壊してしまうような脅威を、潜在的にも、また累積的にも生みだしていくのである。」
・科学技術のもたらす予見不可能性→一般的通念としての合理性への疑い→社会は再帰的になる
・「個人化とは、確信できるものを欠いた状態のなかで、自己と他者にたいする新たな確実性を見いだし、創造することを人びとが強いられているだけでなく、工業社会の確実性の崩壊をも意味している」→個人化は一人ひとりの自由な意思決定に基づいておらず、自分の生活歴を自分で立案・演出するよう強制されている→個人は、機能主義モデルが想定する以上に複雑な言説による相互作用で組成されている。
・再帰的近代化→機能分化は実質的な分裂過程→多元的な意味の並立したシステムの形成(専門知識の特殊性は他の特殊性と対立しかねない。例えば、原子力開発と環境運動)→専門知識の特権性を排除、情報開示、公開討議の必要。

アンソニー・ギデンズ「ポスト伝統社会に生きること」
・地球規模の壮大な実験→抽象的システムの侵食という衝撃のもと、「専門的知識の置き換えと再専有」。
・伝統:前近代社会において諸秩序を一つにまとめ上げていく接着剤。反復性。現在を過去に結び付けていく一連の要素を絶え間なく解釈する作業。「定式的真理」→儀礼等が「真理」の判断基準。状況依存的。
・衝動強迫症:伝統のもつ「真理」との結び付きを失ってしまった反復行動。「伝統主義を伴わない伝統」。
・反復行動は、「自分たちが承知している唯一の世界」にとどまるための方法、つまり、「相容れない異質な」生活価値や生活様式に身をさらすことを避けるための手段。
・選択とは、過去との結び付きで未来をコロニー化し、過去の経験が残した感情と折り合いをつける積極的な側面もある→ポスト伝統の状況下、自己選択→嗜癖も一つの選択。
・アイデンティティ:反復再現と再解釈という恒常的過程→時間を超えた恒常性の創出→過去を予想される未来へと結び付けること。
・専門知識:非人格的原理・分権的・流動性→脱埋め込み→抽象的システムにおいて再埋め込み→再帰性
・「抽象的システムのなかには、人びとの生活の非常に重要な要素となったために、つねに既成の伝統と類似した、岩盤のような堅固さを一見示しているものもある」(ex.医師免許、学位など)。「ひとたび伝統と絶縁してしまった以上、近現代のすべての制度装置が信頼という潜在的に不安定なメカニズムに依存しているという事実には、根本的な意味がある」。
・「《衝動強迫症》とは、《凍結した信頼》、つまり、対象となるものがない代わりに、際限なく続いていきやすい自己投入である」。「嗜癖は、かつて伝統が供給してきたし、またあらゆる形態の信頼も同じように想定してきた例の完全無欠性に相対するものなのである。抽象的システムの世界は、またライフスタイルの選択が潜在的に開かれた世界は、…自発的な参加を要求している」。「人びとは、信頼を、代替手段の選択として投入していくのである」。
・グローバル化:目の前にないものが空間を再構築→目の前にあるものまでも支配していく過程。「誰もが「部外者」でいることができない世界は、既存の伝統が他者との接触だけでなく、代替可能な数多くの生活様式との接触が避けられない世界」。「社会的きずなを、過去から受け継いできたものでなく、むしろ望ましい結果が得られるように《つくり出して》いかねばならない社会」。

スコット・ラッシュ「再帰性とその分身──構造、美的原理、共同体」
・ベック、ギデンズの議論を踏まえた理論的な検討。

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