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2009年7月29日 (水)

ポール・コリアー『戦争・銃砲・投票──危険地帯のデモクラシー』

Paul Collier, Wars, Guns, and Votes: Democracy in Dangerous Places, HarperCollins, 2009

・アフリカ諸国など貧困と政治的不安定に苛まれる“最底辺の10億人”(bottom billion)。どんな対策を立てるにしても、まず実施主体となる政府に実効性を持たせることが出発点である。具体的には、国内的・対外的安定(security)と政策への責任(accountability)が国家のインフラとして最低限の要件→しかし、民族的多様性・対立状態(ethnic diversity)のため、公共財の利用が困難→国家再建の前提としてナショナル・アイデンティティの確立が必要。
・紛争終結後、新政権の正統性を確立するため民主的な選挙を実施する→しかし、“最底辺の10億人”の国々はたいてい民族的に多様→アイデンティティ・ポリティクスが激化→選挙はかえって暴力を誘発しやすい(民主的選挙→政治統合→暴力抑制、という経過をたどる先進国とは対照的)。
・紛争終結後の10年間が最も危険→①国連等による平和維持活動、②インフラ整備も含めて経済的支援が必要
・平和維持活動、over-the-horizon-guarantee(いつでも大軍を派遣できる状態を整えておくこと→シエラレオネ内戦で少数のイギリス軍の存在が抑止効果)→費用対効果に見合う成果がある。
・紛争終結後の経済的支援→インフレ抑制→貨幣への信頼を取り戻し、国外に逃げていた資本(capital flight)を呼び戻せる。インフラ整備は雇用創出にもつながる。ところで、土木工事にもスキルは必要→しかし、長引いた紛争でスキルが失われている→訓練が必要→“国境なきレンガ積み職人”が必要!
・独裁者(例えば、旧ザイールのモブツやジンバブエのムガベ)は金が欲しい、しかし、人気取りのため税はかけなくないし、輸出用天然資源も枯渇→お札を刷る→ハイパーインフレ→国民に税と思わせない実質的な増税。
・カラシニコフ銃(安価で操作性も高い)の流入→内戦リスク→国内情勢が不安定化して政権側は軍事費拡大(国外からの援助も流用)→軍拡に隣国が警戒心→地域全体の不安定化→経済にも悪影響(誰も投資しない)→この悪循環をどうするか? 地域的な協力関係を構築して不安定を解消する努力が必要→国家再建のインフラとしてsecurityを確保
(※松本仁一『カラシニコフ』などを参照のこと→以前にこちらで触れた)
・植民地帝国の解体→部族意識とたまたまの国境線→国境線の範囲内に住んでいるという意味では国家(state)だが、同じ国民としての帰属意識(national identity、national loyalty)が共有された国民国家(nation)ではない。ナショナル・アイデンティティが公共財の利用の大前提となる(そうでないと、支配部族が独占してしまう)。先進国における多文化主義(multiculturalism)は、同じ国家への帰属意識を前提とした上での多文化尊重である点に留意。
・アフリカ諸国の大半は、安全保障の点では規模が小さすぎ(部族ごとに独立すると収拾がつかない)、国内的凝集力が生み出せない点では規模が大きすぎる(部族・民族的対立)→ケースに応じて国家統合・連合も必要。
・民族的分裂状態を克服し、国家建設の基盤としてナショナル・アイデンティティ形成の必要(立場が異なっても集団的行動が可能となるように)→指導者のリーダーシップが不可欠(インドネシアのスカルノ、タンザニアのニエレレが成功例。対して、ケニヤのケニヤッタは経済発展には成功したが、キクユ族に依存→死後、キクユ族内で後継者争い→暫定的にマイノリティーであるカレンジン族のモイを大統領に→モイが実権を握り、カレンジン族優位の体制に)。
・デモクラシー確立に向けて暴力を抑制するには? Accountability→公共投資における透明性を確保するには? Security→安全保障を確保するには? 以上3つの問題点について具体的な提言。
・著者の前著『最底辺の10億人』については以前、こちらで触れた。

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