最近読んだマンガ
西原理恵子『いけちゃんとぼく』(角川書店、2006年)。楽しいとき、悲しいとき、いつもそばで見守ってくれる不思議な生物いけちゃんとの少年時代。西原理恵子『パーマネント野バラ』(新潮文庫、2009年)。田舎の理髪店に集まるおばはんたちの生々しい恋話。西原作品は卑猥な乱雑さを率直に出してくるのだけど、その中からなぜかしんみりとした感傷に胸を打たれるところが魅力。
宮崎あおい主演で映画化されるということで、浅野いにお『ソラニン』(全2巻、小学館、2006年)を手に取った。どっちつかずの焦燥感を抱えながら不安定な同棲生活を送る種田と芽衣子。種田が納得のいくまでバンド活動を再開しようとした矢先、事故死。彼の想いを引き受けようと決意した芽衣子はそれまで触れたことすらなかったギターを手に取る。自分の人生が無意味にしか感じられない終わらない日常、その中での青春期の焦燥感…と言うとありがちかもしれない。ただ、浅野いにおの作品では、彼女たちの一生懸命なところを描きつつ、同時にその“ありがち”な青臭さをシニカルな構えではぐらかす箇所も時折見られる。陳腐な気恥ずかしさは感じさせずに、彼女たちの抱える行き先の分からない戸惑いの心情をきちんと描き出している。なかなか良い作品だと思う。
浅野いにお作品に興味を持って手当たり次第に読んだ。『世界の終わりと夜明け前』(小学館、2008年)は短編集。気持ちの中で自分の居場所が得られずさ迷う人々の心象風景を絵に表現しているシーンが時折あって引き付けられた。街に夕陽がさす光景に“世界の終わり”を感じるシーンなど私は好きだ。『虹ヶ原ホログラフ』(太田出版、2006年)は密度の濃いサイコホラー、張り巡らされた伏線が複雑すぎて頭が混乱してしまうが、その分、ストーリーとしては充実している。『素晴らしい世界』(全2巻、小学館、2003・2004年)は短編集。『ひかりのまち』(小学館、2005年)は郊外住宅を舞台にした連作短編。現在連載継続中の『おやすみプンプン』(小学館、1~4、2007年~)はシュールというか、だいぶ実験的。
山本直樹『明日また電話するよ』(イースト・プレス、2008年)、『夕方のおともだち』(イースト・プレス、2009年)は著者自身による短編ベストセレクション(ただし、マック導入以降の作品)。山本直樹と言えばエロ! セックス描写のない作品は皆無だが、繊細な線で描かれるタッチに、どこか気だるさと無機的な空気が漂う。それが単なるエロとは違うレベルで乾いた叙情を感じさせる。
吉田秋生『海街ダイアリー1 蝉時雨のやむ頃』(小学館、2007年)、『海街ダイアリー2 真昼の月』(小学館、2008年、以降続刊)。四姉妹の家族の物語。舞台となっている古い家と鎌倉の風物がもう一つの主役。現代の話だけど、神社とか梅酒作りとか、さり気なく取り込まれたレトロな題材が、家族の結びつきと葛藤というテーマに程よい風味をきかせて良い感じ。
他に、衿沢世衣子『おかえりピアニカ』(イースト・プレス、2005年)、『向こう町ガール八景』(青林工藝社、2006年)、鬼頭莫宏『残暑』(小学館、2004年)。いずれも短編集。
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