山田昌弘『新平等社会』『迷走する家族』『少子社会日本』
山田昌弘『新平等社会──「希望格差」を超えて』(文藝春秋、2006年)
・市場主義の外部不経済としての格差問題(絶望→希望格差)→完全な機会の均等は無理だとしても、少なくともそれぞれの立場なりに「努力すれば報われる」ことを保障(希望の平等)→第三の道
・ニュー・エコノミーの進展により、大量の定常作業労働者が必要→フリーター・非正規雇用社員は低収入・不安定な立場などだけが問題なのではなく、代替可能な存在→自分の仕事を評価してくれる仕事仲間がいないことでインセンティブ低下→自分の努力をきちんと評価してくれる関係性=社会関係資本が必要
山田昌弘『迷走する家族──戦後家族モデルの形成と解体』(有斐閣、2005年)
・社会制度的に家族へ期待されている機能:①子供を生み育てる責任、②生活リスクから家族成員を守る(他に、「かけがえのない存在」として「生きがい」を与える「アイデンティティ供給機能」)→機能不全→なぜ?
・家族モデルの実現可能性低下と多様な家族モデルの乱立(魅力的な家族モデルを達成できる人とできない人との格差顕在化)
・高度成長期に確立した家族モデル:夫の収入による生活水準規定、性役割分業(専業主婦)→それぞれの役割を果たすことで「愛情」の確認→こうした戦後家族モデルを無理に維持しようとする努力がかえってひずみを増幅
・女性は結婚によって、生業・所得・ステータス・配偶者の学歴などの面で親の世代よりも階層上昇の期待があった→いまや経済低成長・頭打ち→結婚への期待水準と現状との折り合いがつかない
・①ニュー・エコノミーの進展により家族の経済基盤不安定化のプロセス。②個人化→自己実現イデオロギー→非現実的な理想的家族モデルへの憧れ→①と②が同時進行→家族形成の困難
山田昌弘『少子社会日本──もうひとつの格差のゆくえ』(岩波新書、2007年)
・「仕事をしたいから結婚したくない」のではない→収入見通しの不透明化→結婚への期待水準との折り合いがつかない→結婚できない(年収が低くても親と同居→年収が高い一人暮らしよりも豊かな生活が可能→パラサイト・シングル)
・地域格差と家族格差とを伴った少子化が進行中
・近代化による個人主義の浸透→共同体の崩壊により「長期的に信頼できる関係」が自動的には与えられなくなった→「個人的に」そうした関係をつくる必要→「家族」形成への欲求
・魅力格差、経済格差、恋愛(セックスも含む)と結婚との分離
・生育環境・結婚前の生活水準<結婚相手である夫の収入増大の見通し→女性の結婚へのインセンティブ(かつて男性の「魅力」の問題は経済力でクリアできた)
・親が本人にかけた教育等の費用が自身の子育てに向けた期待水準の前提→収入低下→期待水準をクリアできない→出産数を減らす
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