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2009年7月20日 (月)

山野良一『子どもの最貧国・日本──学力・心身・社会におよぶ諸影響』、阿部彩『子どもの貧困──日本の不公平を考える』

山野良一『子どもの最貧国・日本──学力・心身・社会におよぶ諸影響』(光文社新書、2008年)
・著者は児童福祉司で、アメリカに留学・ソーシャルワーカー勤務の経験もあり、具体例と国際比較の視点で貧困環境にある子どもの問題を指摘する。
・自己責任論・人的資本論→個人にかかる社会環境的制約をどう考えるのか? すべてを個人の努力に還元できるのか?
・学力獲得→スタート時点における家族背景という差→教育社会学では親の学歴に重きが置かれてきたが、所得要因が大きい
・貧困環境→生活上の困難を解決する手段を見出すのが難しい。精神的負荷が大きい。出産にも影響。抑うつ感により夫婦関係・親子関係の悪化→子どもの身体面・情緒面で大きな悪影響。
・先進国の場合には、絶対的所得水準だけでは不十分→「相対的所得仮説」:貧困者の心理的ストレスが身体面にも悪影響を及ぼしている。

阿部彩『子どもの貧困──日本の不公平を考える』(岩波新書、2008年)
・山野書と同様に所得効果に着目、データの経済学的分析を通して子どもの貧困環境の問題を考える。
・15歳時の貧困→限られた教育機会→恵まれない職→低所得→低い生活水準→世代間連鎖
・メリトクラシー(業績主義による人材選抜システム)においては、「能力」「努力」が本人にはどうにもならない属性によって影響を受けないことが大前提→貧困等でスタート地点においてハンディがあるのだから、義務教育制度での対策が必要(無償化、「ヘッドスタート」etc.)
・「相対的貧困」概念→OECD諸国の中で日本の相対的貧困率はアメリカに次いで2番目
・日本の社会保障制度において、低所得者は負担と給付が逆転しているという問題
・母子世帯→母親の就業機会が限定されており、長時間労働・低賃金(ワーキングプア)→子どもの養育に悪影響
・「相対的貧困」概念によって貧困を測定(「合意基準アプローチ」、つまり当該社会において何が最低限必要なのかアンケートの多数決で項目設定)→所得金額ベースの議論は抽象的で分かりづらいのに対し、具体性をもった政策提言につなげられる

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