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2009年6月14日 (日)

岩田重則『〈いのち〉をめぐる近代史──堕胎から人工妊娠中絶へ』

岩田重則『〈いのち〉をめぐる近代史──堕胎から人工妊娠中絶へ』(吉川弘文館、2009年)

 “近代”なるものをどのように捉えるのかは難しいテーマだが、本書は堕胎に焦点を合わせている。1900年代までの日本は、前近代的な性関係や堕胎がとりわけ地方の生活習慣レベルで残存している一方で、資本主義的生産システムのしわ寄せとしての貧困・生活苦、近代的法体系における堕胎罪にも取り囲まれ、いわば“前近代”と“近代”とが並存した状況だったという。両者の相克により摘発されたり、堕胎手術の失敗で死亡したりと悲惨なケースのあったことが当時の新聞雑誌等の史料の丹念な調査を通して浮き彫りにされる。1920年代以降から専門的な産科医による人工中絶手術が増加、また“職業婦人”としての近代産婆の登場によっても、生活習慣レベルでの“生”や“性”の捉え方が変化しつつあったことが窺われる。資本主義発展段階説における講座派への疑問という問題意識は古くさいが、堕胎というテーマから“近代”を考える視点は興味深く読んだ。

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