西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』、他
西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(理論社、2008年)
キレイごとじゃなくておカネは大事──と言っても、きいたふうなすれっからしとはまた違う。西原さんが自分の生い立ちをつづりながら、おカネのことを考える。貧しさの渦中に絡め取られた負のスパイラルから何とか脱け出そう、何とか自分の自由を確保しよう、そういうもがきの中で身を切るようにして稼いだおカネの話。最終章は亡夫鴨ちゃんの手引きで旅して垣間見た世界の貧困のこと。スモーキー・マウンテンやグラミン銀行の話題にも触れたり、結構マジメだ。
バクチにありったけを注ぎ込んで勝負に出て自殺しちゃったおとうちゃんのことが印象に残る。馬鹿で大迷惑、だけど、良いと悪いとかいう次元じゃなくて、そういう羽目に陥らざるを得ないこともある、そういうあたりを突き放しつつもどこかウェットな同情で見つめる眼差しにはグッとくる。このように、クールなちゃかしとあたたかい優しさとを合わせ持った感性が西原作品の何とも言えず魅力的なところだ。前にも書いたけど、『ぼくんち』(→こちら)は本当に傑作だと思う。自伝的なマンガ『上京ものがたり』(小学館、2004年)、『女の子ものがたり』(小学館、2005年)も再読。『女の子ものがたり』は深津絵里の主演で映画化され、近々公開されるらしい。西原原作の『いけちゃんとぼく』も現在映画公開中。観に行こうかどうしようか。
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