こうの史代『この世界の片隅に』
こうの史代『この世界の片隅に』(上中下、双葉社、2008~2009年)
ようやく完結。こうの史代のやわらかいタッチの絵柄が好きなので上巻を書店で見かけて以来心待ちにしていた。ベストセラーとなり映画化もされた『夕凪の街 桜の国』(双葉社、2004年)は広島の原爆をテーマとしていたが(映画は文部省選定のような感じだったが、麻生久美子の薄幸な面持ちが良かった)、『この世界の片隅に』の舞台はお隣の呉。軍港の城下町である。広島から嫁いできたおてんば娘すずが主人公。刻々と激しさを増していく戦火に翻弄される不条理、しかし、それをほんわりとやさしい絵柄が包み込んでくれるので、静かな叙情すら感じられてくる。そこがいい。
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