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2009年5月16日 (土)

「チェイサー」

「チェイサー」

 元刑事のジュンホはデリヘル嬢斡旋をなりわいとしている。ある客から電話があった。番号に見覚えがある。働いていた女性が前に姿を消してしまったのだが、その客の所へ行った時のことだった。「くそっ、こいつか、女を売り飛ばしてやがるのは」 客の家へ行ったミジンに場所を教えろと連絡を入れたのだが、返信はない…。

 猟奇的な連続殺人事件をめぐるサスペンス・ドラマ。映画の早い段階で犯人はいったん捕まるのだが、証拠不十分で釈放される。チェイサー=追跡者というタイトルには、釈放されて家に戻る犯人、彼の心に巣食う闇、この両方をたどるという意味が重ねあわされているのだろう。映画の全編を通して夜もしくは雨。緊張感のあるカメラ・アングルは、このダークな雰囲気に観客をグイグイと引き込んでいく。ミジンが何とか逃げ出した時だけ真夏のけだるい陽光がふりそそぐ。結末を考えると、このシーンの静かな明るさがいっそうやりきれない気持ちにさせてしまう。監禁された被害者の逃げられない絶望的な恐怖を浮び上らせようとしているようだ。サスペンス・ドラマとしての完成度は高くて見ごたえはあるが、だいぶ後味の悪さも残った。

【データ】
監督・脚本:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ
2008年/韓国/125分
(2009年5月16日、新宿・シネマスクエアとうきゅうにて)

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「チェイサー」★★★★ キム・ユンソク、ソ・ヨンヒ、ハ・ジョンウ、キム・ユジン 主演 ナ・ホンジン 監督、2008年、125分、韓国 「汚職で刑事を辞めて、 今は女の子の斡旋をして その日をなんとか暮らす男が 連続殺人犯を追いつめる、 そこに正義はあるのか?」 早いうちに犯人は明らかになり、 犯人の家に派遣された女の子が 捕らわれハンマーで襲いかかられ、 浴室で横たわる、 主人公は自分が無理に送り出した 女の子の家へ行き、 彼女に子供が居ることを知... [続きを読む]

受信: 2009年5月31日 (日) 10時02分

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