「ブッシュ」
「ブッシュ」
父を超えられない息子の葛藤を描く。ブッシュ・ジュニアを演ずるジョシュ・ブローリンは本当に生き写し。パパ・ブッシュ役であるジェイムズ・クロムウェルの長身と並ぶとただのガキにしか見えないのは意図的なキャスティングか。ディック・チェイニー役もそっくりだったが、リチャード・ドレイファスだというのはエンドクレジットで知って驚いた。過去のオリバー・ストーン映画では「ニクソン」のアンソニー・ホプキンスの印象が強かった。ニクソンの顔の長方形に対してホプキンスは丸顔、しかし、笑ったときの表情などそっくりで、さすがホプキンス!とうなった覚えがある。
パウエルの発言を通してイラク戦争への疑問点が指摘されるが、通り一遍な感じ。石油の確保が目的だとチェイニーが大演説をぶつが、そう単純化できるかどうかは問題が残るはずだ。あくまでもブッシュ・ジュニアのグダグダしたもがきっぷりがメイン・テーマだろう(そこに共感するかどうかは別問題)。この映画をアメリカ政治論に結び付けたがる人もいそうだが、それは明らかに無理がある。
二時間以上の長丁場だが、退屈はしない。ブッシュ関連ではマイケル・ムーア「華氏911」なるトンデモ映画もあったが、あれに比べたらはるかにマシだ(以下、蛇足。私自身、ブッシュ政権に対して批判的ではあるが、ムーアの理屈ではなく映像のコラージュでマイナス・イメージを作り上げていくやり方は観ていて不愉快だった。ムーアは反体制の立場だから許されるにしても、体制側が同じ手法で宣伝をやったら悪質なデマゴギーになってしまう。自称進歩派・良心派にムーアを持ち上げる人々がいたが、そうしたところに無自覚な点で本当に頭が悪いんだなあとつくづく思った。進歩派か保守派かはともかく、バカのくせにもっともらしく政治を語りたがる輩にはうんざりする)。
【データ】
原題:W.
監督:オリバー・ストーン
2008年/アメリカ/130分
(2009年5月23日、角川シネマ新宿にて)
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