「インスタント沼」
「インスタント沼」
仕事に行き詰って会社を辞めたジリ貧OL沈丁花ハナメ(麻生久美子)。やり直そう!と決意した矢先、母親(松坂慶子)が河童を探しに行って池に落ち、病院に搬送されたまま意識不明。ひょんなことから母の古い手紙を発見、なんと実の父親のことが書かれていた。訪ねていくと、そこは「電球商会」なる怪しげな骨董屋。出てきたのは、見るからに胡散臭そうなはったりオヤジ(風間杜夫)…。
ナンセンスな小ネタを絨緞爆撃のように次々とかましてくるのが圧倒的。一つ一つはアホらしくても、これだけ連発されると脈絡とか意味とか関係なく一定のリズムが出てくる。だから、ハナメの迷走ぶりが小気味良いというか、壮快にすら感じられる。小ネタが飛び交うリズムだけでこの映画は成り立っていると言っていい。とりわけ冒頭の2,3分ほど、テンポよくハナメを紹介するシークエンス、これなんてナンセンスとリズム感の組み合わせがもう絶妙で、この時点で三木聡ワールドに取り込まれてしまった。ストーリーは意味不明でも、つくりは相当に緻密だ。舞台や小道具も細部まで凝っている。
何よりも主演の麻生久美子が実に良いなあ。素っ頓狂なマイペースぶりとハイテンションで最初から最後まで休みなく疾走する感じで、それが彼女のすずやかなかわいらしさと不思議に合っている。やはり現在公開中の「お と なり」(→こちらを参照のこと)で見せてくれる静かに抑えた表情の出し方とは対照的だが、どちらの役柄でも彼女の持っている雰囲気がうまく活きている。本当に素敵な女優さんですね。
【データ】
原作・脚本・監督:三木聡
出演:麻生久美子、風間杜夫、加瀬亮、松坂慶子、他
2009年/120分
(2009年5月24日、テアトル新宿にて)
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