「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア リアリズムから印象主義へ」
「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア リアリズムから印象主義へ」
19世紀から革命前の20世紀初頭までのロシア絵画の展覧会。風景画が印象に残った。画面内の奥行きの広がりからはロシアの大地の大きさを想像して圧倒されるし、針葉樹林の風景には一種の清涼感があって観ていて心地よい。たとえば、シーシキン「ぺテルホフのモルドヴィノワ伯爵夫人の森で」の鬱蒼とした木立には穏やかな美しさがある。レーピンが草原にいる家族を描いた「あぜ道にて」のやさしげな陽光にはほっとする。アルヒーポフ「帰り道」、地平線の夕焼け以外には何も見えない荒涼たる平野を馬車が進む、そのたたずまいからは独特な哀愁が漂っていて、ムソルグスキー「展覧会の絵」の「ビドロ」のメロディーが何となく頭の中で流れた。
肖像画も多いが、目玉はポスターにも用いられているクラムスコイ「忘れえぬ女(ひと)」だろう。この絵は昔から様々にイマジネーションをふくらまされてきたらしい。プライドの高そうな気品があって、そこが何とも言えずひきつけるものがあるけれど、私には冷たそうな印象もある。私はむしろ同じくクラムスコイ「髪をほどいた少女」の方が好きだ。けだるげに憂鬱そうな眼差しにはほうっておけない魅力があって見入ってしまった。
(渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアム、2009年6月7日まで)
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