『イラストレーション』No.177(2009年5月号)
書店をふらついていたら、『イラストレーション』No.177(2009年5月号)の表紙が目についた。黒い色調をベースに、ぼやーっとした輪郭。酒井駒子さんの絵だ(→これ)。パラパラめくると「個人特集 酒井駒子 私と絵本と黒と」。買った。今回は前編で、後編は次号らしい。
前にも書いたけど(→『酒井駒子 小さな世界』)、私は酒井さんの絵のファン。書店の新刊棚で彼女の装丁した本が目に入ると、(買うかどうかは別にして)必ず手に取る。人物やキャラクターを描く輪郭の線はやわらかく、ほのかな叙情を感じさせるんだけど、黒の色調が雰囲気をひきしめてあまったるさに流れない、その独特なところが何とも言えない。まとまった画集はないので、雑誌でこうした特集が組まれていたらこまめに買っている。
インタビューでは、最初から黒をねらったわけではない、と語る。白をベースにすると黒の出方が汚くなったので、逆に黒をベースにしたらやりやすかったからという。黒を使い始めて、そうか、自分は黒が好きなんだなあ、と後から気付いたらしい。
ついでに図書館に寄って、『くさはら』(福音館書店、2008年)、『ビロードのうさぎ』(ブロンズ新社、2007年)を借りて眺めた。
もうひとつ、「嶽本野ばらが選んだ装画/挿絵50」も面白い(嶽本野ばらって確か大麻で逮捕されたはずだが、いつの間にか復活してる)。テニエルのアリス、中原淳一、高橋真琴、アルフォンス・ミュシャといったあたりはいかにも嶽本らしいと思いつつ、角川文庫・横溝正史シリーズの杉本一文、春陽堂・江戸川乱歩シリーズの多賀新といったあたりは私も気になる。写真で取り上げられている乱歩の『偉大なる夢』は戦時下に書かれた大いなる駄作(笑) それはともかく、胡散臭い感じがいいなあ。
それから、山口晃も気になっている。今回載っているのはサラッとおとなしめの絵。あの緻密だけど微妙にキッチュな時代絵?みたいな大作はついつい見入ってしまう。
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