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2009年4月30日 (木)

佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』

佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(集英社インターナショナル、2008年)

 沖縄の問題は、私などにはちょっと居心地の悪さを感じるところがある。基地の島、つまり日本の安全保障という大義名分で様々な負担を負わせてしまっていることへの本土の人間としての後ろめたさがあるし、プラスして左や右の政治的思惑が絡んでくるので、こうした問題から距離をおきたいという気持ちは否定できない。他方で、そうした逃げの意識から「美ら島」のエキゾティックな南国イメージに寄りかかろうという気持ちも芽生え、しかし、それも表面的かなあという後味の悪さがわだかまる。

 本書の場合、そうした居心地の悪さとは視点が異なる。色々なテーマがごっちゃまぜだが、とりわけアンダーグラウンドの話が多い。沖縄戦後史を駆け巡った有名無名多彩な人々について取材を進める。暴露趣味というのではなく、正論では割り切れないドロドロとした人間模様は、時にあっけらかんとしたピカレスク小説を読むような不思議な迫力をも感じさせる。フィリピン人との混血児でヒットマンとならざるを得なかった男の生真面目さが一番印象に残った。沖縄で奄美出身者が苛酷な差別待遇を受けていたことは初めて知った。米兵によって残酷に殺された女性たちの現場写真を、捜査が続行できないため泣きながら燃やす刑事の話は忘れがたい。

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