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2009年4月16日 (木)

岩田規久男編著『昭和恐慌の研究』

岩田規久男編著『昭和恐慌の研究』(東洋経済新報社、2004年)

 現在の平成不況における経済政策を考える先行事例として1920~1930年代の昭和恐慌を検討した共同研究。私は数式やグラフをみると頭が痛くなってくるので、そういう箇所はとばしながら通読(日経文化賞受賞作だから専門家の間で論拠の検証はクリアされているはず)、とりあえず読みながらとったメモを箇条書き。

・金本位制は貨幣と金(きん)の兌換を前提→金の自由な国際移動と国内における貨幣供給量とが連動→物価の自動調節機能を期待
・実際には、金流出国と金流入国とは非対称的で、教科書的にはうまくいかない
・WWⅠで各国は金本位制から離脱。戦後、徐々に復帰していたが、日本は関東大震災によるダメージなどのため復帰のタイミングが遅れていた
・浜口雄幸内閣の井上準之助蔵相は金解禁を断行。その背景には「金本位制心性+清算主義」イデオロギー。つまり、金解禁をすれば(グローバル・スタンダード!)、金本位制の自動調節機能によって不健全な状態にある財界の整理が進み(構造改革!)、一時的には苦しいかもしれないが我慢すれば経済の立て直しができる
・経済政策の割り当て問題。マクロ経済の安定と財界整理の問題とでは処方箋が異なる→前者を優先しつつ両方取り組む必要(石橋湛山、高橋亀吉、小汀利得、山崎靖純ら新平価解禁四人組はこの点を理解していた)→しかし、「金本位制心性+清算主義」の人々(マスメディア主流派や井上蔵相)はこの点を混同していた
・人々の経済行動はどんな予想をするかに応じて異なる結果をもたらす→予想の根拠となるゲームのルール=政策レジームを転換したことを人々に信用させる必要がある(デフレ下ではインフレ期待の形成が必要→リフレ政策)
・高橋是清蔵相が金輸出再禁止、国内の経済政策を自律的に展開可能→高橋財政は「二段階レジーム転換」という仮説を提示(金本位制離脱→国債の日銀引き受け)
・経済メディアの問題。経済の長期停滞の打開策を求める世論の期待があった。大新聞などの経済メディアの頭を縛っていた「金本位制心性+清算主義」イデオロギーが世論をあおり、井上蔵相もこれに便乗した。世間知と専門知とが乖離したとき、通俗的に分かりやすい世間知が政府の政策決定に強い影響を及ぼしてしまう問題(小泉自民党の郵政選挙を思い浮かべる)

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