« モンテ・メルコニアン──ある“アルメニア系アメリカ人”の軌跡 | トップページ | 猪木正道『ロシア革命史──社会思想史的研究』 »

2009年3月 1日 (日)

辻惟雄『岩佐又兵衛──浮世絵をつくった男の謎』『奇想の系譜』『奇想の図譜』

 先日、NHK教育テレビ「新日曜美術館」で岩佐又兵衛の特集をやっていた。「山中常磐物語絵巻」の印象が鮮烈だった。斬り合いのシーンで首がとび、胴がとび、血しぶきがはねる。それに、血をダラダラ流しながら死ぬ間際の常盤御前の恍惚とした表情──。ゲスト出演の辻惟雄さんは「劇画的」という表現を使っていたが、ある種の残虐さにドラマの演出として目を引く力を持たせている。日本画のことは全く知らないので、こういう絵もあるんだと驚いた。

 興味を持ち、辻惟雄『岩佐又兵衛──浮世絵をつくった男の謎』(文春新書、2008年)を手に取った。新書だがカラー図版が豊富で読みやすい。岩佐又兵衛の父親は、信長に叛旗を翻した荒木村重。又兵衛の母も含め一族のほとんどが殺されたにもかかわらず、村重は生きて逃げた。絵師として身を立てた又兵衛にとってこの辺りのことはトラウマになって創作的動機として働いているのだろうか。

 引き続き、辻惟雄『奇想の系譜』(ちくま学芸文庫、2004年)、『奇想の図譜』(ちくま学芸文庫、2005年)を手に取る。前者では岩佐又兵衛をはじめ、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢藘雪、歌川国芳と、個性的でありすぎたがために近世絵画史の脇にのけられていた画家たちを取り上げている。伊藤若冲は最近人気があるが、私は曾我蕭白の、グロテスクというかユーモラスというか、人を食ったような表情の描き方が面白くて好き。後者は近世日本画を主軸としつつ、それとの絡みで古今東西の絵画を奔放な好奇心にまかせてわたりあるく。対象とする画家たちはみな一癖も二癖もある奴らばかりだが、それに応える辻さんの旺盛な遊び心+豊かな学識が見事に響き合っている。見て、読んで楽しい本。図版がモノクロなので物足りなく感じる人もいるかもしれないが(かと言って、カラー図版にしたら価格設定が難しくなってしまう)、手もとに置いて、折に触れてめくりかえしたい本だ。

|

« モンテ・メルコニアン──ある“アルメニア系アメリカ人”の軌跡 | トップページ | 猪木正道『ロシア革命史──社会思想史的研究』 »

美術・ヴィジュアル本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197828/44212502

この記事へのトラックバック一覧です: 辻惟雄『岩佐又兵衛──浮世絵をつくった男の謎』『奇想の系譜』『奇想の図譜』:

« モンテ・メルコニアン──ある“アルメニア系アメリカ人”の軌跡 | トップページ | 猪木正道『ロシア革命史──社会思想史的研究』 »