片倉佳史『台湾に生きている「日本」』
片倉佳史『台湾に生きている「日本」』(祥伝社新書、2009年)
ふとしたきっかけから台湾に行くことが習慣化している。理由は三つ。第一に、私の祖父母がかつて台湾で暮らしていたという個人的事情からの親近感。第二に、台湾の消費生活水準は日本に近接しており(韓国も同様)、映画・音楽・文学などで日本も含めて東アジア圏共通の文化的感性があり得そうなことへの興味(だから中国語は苦手なくせに書店にも積極的に足を運んだ)。
第三。こんな小さな島国なのに原住民族も含めて多様な民族構成、しかも清→日本→中華民国と支配者が目まぐるしく変わる中でアイデンティティも複雑に錯綜している。そうした歴史的な複雑さそのものに私は関心がある。そこに植民地支配という形で日本も一役買っていることはやはり気になる。ただし、視点はあくまでも台湾人自身にとってどんな意味を持ったのかというところに置くべきで、親日/反日という安易で無粋な(日本人視点の)政治論を絡めるのは好きじゃない。
本書『台湾に生きている「日本」』は、田舎まで足を運び、古老から話を聞き取りながら、台湾に見える「日本」の痕跡を丁寧に掘り起こし、記録している。巻末にある「台湾の言葉となった日本語」も眺めているだけで台湾史の様々な背景が見えてきて興味深い。片倉佳史『台湾 日本統治時代の歴史遺産を歩く』(戎光祥出版、2004年)、同『観光コースでない台湾──歩いて見る歴史と風土』(高文研、2005年)は私が台湾を歩く際に格好のガイドブックとしてお世話になったし、氏のホームページ「台湾特捜百貨店」も時折のぞかせてもらっている。この2冊及びホームページに掲載されている写真も見ながら読むとおもしろいだろう。
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