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2009年3月 8日 (日)

「悲夢」

「悲夢」

 ジン(オダギリ・ジョー)は夢の中で追突事故を起こした。あまりに生々しい夢だったので気になり、現場へ行ってみたところ、事故は本当に起こっていた。ただし、犯人は彼ではく、夢遊症状にかかった女性ラン(イ・ナヨン)。ジンの夢がランの行動によって現実化してしまうという不可思議。

 ジンは恋人に捨てられ、未練が断ち切れず、夢の中で彼女に会おうとする。ランは男を捨て、その男が憎くて憎くてたまらないのに、ジンが見る夢の作用によってその捨てたはずの男と寝てしまう。夢とうつつ、愛情と憎悪が入れ替わり、交錯しながら、二人はそれぞれに、自身の恋人に対する一方通行の想いを思い知らされていく。

 オダギリ・ジョー一人だけが日本語で語り、他はすべて韓国語なのに、みな何の違和感もなく会話が交わされる。同じ光景を見ているようでいて、実は一人ひとりが抱える心象風景は全く別物なのかもしれない、違うものを見てもそこには同じ想いが重ねあわされているのかもしれない、そうしたこの映画のテーマが言語設定からも端的に示されている。『荘子』にある「胡蝶の夢」のエピソードがヒントとなっているそうだ。ラン=胡蝶とほのめかすシーンが時折散見される。

 キム・ギドク映画ではいつものことだが、眠らないよう頭を針でチクチク刺したりと肉感的に痛そうなシーンもある。家屋や寺院など韓国らしさを強調する演出が見られるが、彼の映画が持つ寓話的なストーリー構成そのものには抽象性が高く、あまり特定の国籍は感じさせない。韓国映画という枠組みを外したところで私はキム・ギドクの映画に興味を持っている。

【データ】
監督・脚本:キム・ギドク
出演:オダギリ・ジョー、イ・ヨナン、他
2008年/韓国/93分
(2009年3月7日、新宿武蔵野館にて)

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