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2009年2月24日 (火)

東京国立近代美術館フィルムセンター「無声時代ソビエト映画ポスター展」

東京国立近代美術館フィルムセンター「無声時代ソビエト映画ポスター展」

 ロシア・ソビエト文化研究家で映画評論家の袋一平が戦前、ソ連に渡った際に収集した映画ポスター(現在はフィルムセンターが所蔵)の展覧会。全部で140点もあるため展覧会は三期間に分けて行なわれるとのことで、私はカタログを購入して眺めている。

 時代的に言って共産党の宣伝映画が多いわけだけど、デザイン的には結構目を引くものもある。なぜか黒い色調のものが目につく。この頃によく見られる鋭角的な線を多用した構図が私は好きだ。いわゆるロシア・アヴァンギャルドの流れを汲むデザイナーの手になる。

 ロシア革命に際して、既存体制の打破→前衛という点で政治運動と芸術運動とがかりそめの同盟関係を組んだものの、政治が再び体制化する一方、芸術は魂を奪われてしまったという悲劇的ななりゆきに私は関心がひかれている。思想的には党の統制下に入らざるを得なかったが、前衛的なデザインは引き継がれた。

 以前、日本の戦争中の生活光景をテーマとしたある展覧会を見たとき、空襲への警戒を呼びかけるポスターがあったのだが、サーチライトが鋭角的に交差するなかなか格好良いデザインで目を引いた覚えがある。明らかに未来派風だった。その時にもソ連体制下のアヴァンギャルド的なデザインを思い浮かべた。日本でも戦時色が強まる中、食うために職業として宣伝ポスターをつくっていたデザイナーたちがいたが、彼らも同時期のソ連のデザイナーたちと同様に、1920年代のアヴァンギャルド思潮(日本では大正モダニズムの頃)の洗礼を受けていたわけだ。この辺り、興味はあるんだけれど、調べようにもなかなか手が回らない。

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