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2009年1月 3日 (土)

台北探訪記(6)

(承前)

 MET西門站で下車。西門のメインストリートの南側、中華路(かつてはここを台湾鉄道が走っていたが、現在は地下化され、大通りになっている)脇に、台湾歴史風情彫絵という台湾史に関わるシンボリックなものを彫りこんだ大きなレリーフが建てられている。割合と新しい。この背後の一画は萬華406号広場となっている。日本統治時代、西本願寺のあった所だ。当時の建物が崩れかかりながらも保存されている(写真84、85、86)。日本は台湾統治にあたり宗教政策面でも日本化を進めようとしたが、神道系は入り込めず、仏教系が中心となったらしい(胎中千鶴『葬儀の植民地社会史──帝国日本と台湾の〈近代〉』を参照のこと)。国民党の台湾接収後、この西本願寺の建物に特務の逮捕した政治犯が収容されたと何かで読んだ記憶もある。

 華西街観光夜市に足を運ぶ。かつては近くに公娼地区があったせいか、“情趣”商品とか精力剤的なものとか売ってたり、他の夜市よりもいかがわしい雰囲気のあるところが面白い。狭い横道に入ってみる。淫靡な空気がますます強まる。いわゆる私娼窟と言ったらいいのか。ちょうど陽も落ちた頃合。明るい時間帯には誰もいないだろうし、かと言って夜晩くにこういううさんくさい横道に入り込む勇気は私にはない。一人やっと通れるくらいの狭い路地に、明らかに昔は置屋だったと思われる構えが連なっている区域もあった。写真を撮っておこうかとも思ったのだが、誰何されても面倒なので、さっさと通り抜けた。

 温暖な気候のためか、台湾の店舗というのはどこも開放的で、何をやっている店なのか外を歩いていても中がよく見える。こうした横道には、本物の食堂も混じってはいるのだが、所々、○○清茶房とか△△餐庁といった看板を出しつつも女性たちがたむろしているだけの店がある。奥の方に個室ブースが並んでいるのが見えた。あそこで“接客”するのだろうか。きれいな女性は一人も見かけなかった。女性たちも、客層も、年齢はだいぶ高めで、男性はとりわけ老人が多かった。老人と女性たちが交じり合って談笑したりカラオケしたりしているのも見かけた。

 大陸からやって来た外省人兵士たちには、結婚もできず、台湾社会にも馴染めず、孤独をかこっていた人々が多く、こうした私娼窟で安い女性を買って淋しさを紛らわせていたと何かで読んだ記憶がある。彼らの孤独な老後は一つの社会問題になっていると聞く。ここで見かけたカラオケに興じる老人たちも、そうした外省人兵士の現在の姿なのだろうか。

 龍山寺に出た(写真87)。去年、私の初詣はここだった。龍山寺站からMRTに乗り、忠孝復興站で下車。微風広場の紀伊国屋書店へ。駅からちょっと歩くが、雨が降っていても停仔脚は実に便利だ。

 MRTに乗って市政府站まで行き、昨日に続いてもう一度誠品書店信義旗艦店を見て回る。新刊・ベストセラーの平台に積んであった新刊小説を何冊か買い込んだ。台湾文学評論の本をいくつか手にとってパラパラめくってみたのだが、やはりライトノベルを取り上げたものはない。藤井樹とか九把刀(Giddens、ギデンズ )といった名前を台湾の書店の新刊コーナーでたびたび見かけるので何者なのか気にかかっているのだが、ライトノベルは文学評論というよりも、社会学的なサブカルチャー研究の対象となるのか。

 MRTに乗り、再び西門站まで戻った。西門近辺は、日本で言うと渋谷、原宿といった感じの若者向け繁華街。道路はきれいに舗装され、メインストリートの大型ビジョンには「嫌疑犯X的獻身」(容疑者Xの献身)とか「黄金公主──敵中突破 The Last Princess」(隠し砦の三悪人 The Last Princess)とかの映像が流れ、行き交う人の服装は日本と全く変わらない。何やらパラレルワールドに迷い込んだような錯覚にも陥る。ただ一点違うのは、屋台が出没して、このファッショナブルな街並に食欲をさそう香りを漂わせていること。本来は非合法らしく、パトカーが近づくと(このパトカーがまたゆっくりとやって来る)、おいちゃん、おばちゃんたちは屋台を引いて三々五々逃げ出します。

 12月30日の昼過ぎ、桃園国際空港を飛び立ち、成田に帰国。色々と都合がつかなくて4日間(実質的に動けたのは2日間)しか時間がとれなかったが、今度はせめて1週間くらいは時間をとって地方をじっくりまわりたいものである。

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