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2008年9月7日 - 2008年9月13日

2008年9月13日 (土)

国立新美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」Bunkamura ザ・ミュージアム「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」

 9月に入ってから色々とバタバタしておりまして、ご無沙汰いたしておりました。ようやく再開です。

国立新美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」

 国立新美術館へ来たのは初めてだ。すぐ隣は政策研究大学院大学、こことの境あたりに美術館の別館がある。このあたりにはかつて旧歩兵第三連隊の兵舎があり(二・二六事件の部隊もここから出発した)、戦後は東大の生産技術研究所として使われていたそうだ。そのほんの一部分だけが保存されているのだが、美術館側から見るとその背面は全面ガラス張り。黒川紀章のやることは意味がよく分からない。館内に旧兵舎の模型がある。「日」の字型の配置が特徴的。確か、旧台湾総督府(現・総統府)がこの形だし、無料招待券があるからと呼んでくださったM先生によると上海でも「日」の字型の旧海軍兵舎を見たという。“大日本帝国”の威光を示す建築様式ということでしょう。

 さて、目的の「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」。静物画というテーマ自体が地味だし、全体的に黒を背景とした作品が多いので華やいだ感じは全然しない。静物画→動かない→死のイメージにつながるのか、狩られた獲物とか、vanitas=虚栄をテーマとしたものとかが目立つ。だけど、正直なところ、ちょっと退屈だったかな…。5年ほど前に東京藝術大学附属美術館でやはりウィーン美術史美術館の展覧会を見たことがある。その時はブリューゲルの群衆画とかアルチンボルドの変な顔とかあって割合に面白かった記憶があるのだが、今回は出品内容が全く違う。M先生は、スケベじじいが女小間使いの胸を触っている絵を指さし「これが一番好き」とのこと。先生の奇抜な(?)着眼点に改めて感服した次第。

 蛇足ながら、去年、台北の故宮博物院に行った折、館報の『故宮文物』を買ったらウィーン美術史美術館の特集があった。私の行った前後の時期に展覧会をやっていたらしい。ウィーン美術史美術館には何のこだわりもないのだが、不思議と縁があるのも妙なもの。

Bunkamura ザ・ミュージアム「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」

 「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」に比べると、こちらの方が彩り華やかで人物の表情にもドラマがあって、見ていて楽しかった。「ローリーの少年時代」、青白く線の細そうな少年が船乗りの話に食い入るように聞き入っている姿は気になった。将来どうなるかは分からないにせよ、原点としてこういう純真さがあるんだなあ、などと思いつつ。

 今回の目玉「オフィーリア」にもやはり見入ってしまう。口を半開きにどこか惚(ほう)けたような表情と周囲の緑との対比が幻想的。変な話になってしまうが、先日、M先生から荒俣宏『衛生博覧会を求めて』(ぶんか社、1997年)を薦められて読んだばかり。この本に「解剖されたウェヌス」という人体解剖人形の写真があり、とろんと眠たげに惚けた表情のなまめかしさが不思議と美しく印象に強かった。その解剖人形の表情がこの「オフィーリア」と私の頭の中でダブってしまい、振り払おうとするとますます同じに見えてきてしまう。両方とも死体だからと言ってしまえばそれまでだけど、M先生の悪い影響には気をつけないと。

 「露にぬれたハリエニシダ」が一番好きだ。朝靄のかかった木立の中、白く消え入りそうな緑の濡れたような色合い。この画面の中に自分も入り込んで一緒に消えてしまいたいという妙な衝動が胸に渦巻く。そんな感じにぼんやり眺めているだけで心地よい。

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