国立西洋美術館「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」
国立西洋美術館「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展
ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864~1916)はデンマークの画家。日本で紹介されるのは今回が初めてだそうで、私も今まで知らなかった。通勤電車内の広告ポスターで「背を向けた若い女性のいる室内」を見かけた。薄暗い青というかグレーのような色彩は一見地味なんだけど、不思議と透明感のある静けさに何とも言えず引付けられて、国立西洋美術館まで足を運んだ。
北欧のフェルメールとよくたとえられるらしい。ハンマースホイ自身、フェルメールをだいぶ意識していたようだし、室内画の構図、窓から射し込む光の描き方など確かにフェルメールを彷彿とさせる。ただし、フェルメールの描く人物には豊かな表情が見られるのに対して、ハンマースホイの場合、人物はオブジェとして突き放すように配置されている。彼は自宅に引きこもって室内画ばかり描いていたそうだが、登場するのは妻のイーダ。どの絵を見ても、後ろ向きだったり、視線が違う方向に向いていたり。ベタベタした感傷を描き方として持ち込まず、適度な距離を取った緊張感。どこか、冷たい。だけど、その冷たさに、家具調度類など余計なものを取り除けた簡潔な構図、モノトーンの色彩感覚が相俟った静けさが、私にはこの上なく心地よい。
国立西洋美術館での会期は12月7日(日)までなので、興味のある方はお急ぎを。
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