« フロイトをネタに適当な雑談(いい加減だから読まなくていいです) | トップページ | 佐藤卓己『輿論と世論──日本的民意の系譜学』 »

2008年10月 1日 (水)

角英夫『中国 夢と流転──庶民たちの改革開放』

角英夫『中国 夢と流転──庶民たちの改革開放』(NHK出版、2008年)

 中国社会の急激な変化、沿海部のきらびやかな繁栄ぶりは何となくイメージもつくが、内陸・農村部の事情については外の視点ではなかなか窺い知れない。敢えて農村問題にも目を向けてNHKのドキュメンタリー番組を制作したことのある著者は、かつて出会った人々のもとへ十五年ぶりにたずねていく。

 貧困指定地域から移民した家族のその後。改革開放の聖地と謳われた村の現在。とりわけ私が印象的だったのは、第一章、深圳へ出稼ぎに来た少女とそのボーフレンドの物語。

 農村人口の都市への緩やかな移行が政策として進められている(教科書的な連想で恐縮だが、19世紀ロシア、アレクサンドル2世の農奴解放令→農村人口の流動化→ロシアの産業化の進展、というプロセスを思い浮かべた)。都市と農村の格差、都市内部でも農民工の過酷な労働実態が問題となり、“和諧社会”を掲げる現政権も法整備等の対応を進めてはいる。しかし、結婚した二人、夫となった彼氏は政府の政策動向を的確に読み取ってチャンスをつかもうとするが、コネも学歴もない彼らに現実の壁は厳しい。

 「このままで終わりたくない」──「後悔しない人生、社会からの手応え…、言い表そうとすると陳腐に堕するが、それは「豊かさへの欲望」などと一言で片付けることはできない何かだろう。かつて農村に閉じこめられていた「個」が一斉に解き放たれ、チャンスを求めて彷徨しながら行き場を探している。」(80ページ)

 本書は、中国における社会問題とそれへの政府の施策もたどりつつ、同時に、こうした眼差しを通して、一人ひとりがどのように社会的動向と向き合おうとしているのかを描き出していく。少々感傷的なところも含めて説得力のあるノンフィクションだと思う。

|

« フロイトをネタに適当な雑談(いい加減だから読まなくていいです) | トップページ | 佐藤卓己『輿論と世論──日本的民意の系譜学』 »

中国」カテゴリの記事

国際関係論・海外事情」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197828/42656211

この記事へのトラックバック一覧です: 角英夫『中国 夢と流転──庶民たちの改革開放』:

« フロイトをネタに適当な雑談(いい加減だから読まなくていいです) | トップページ | 佐藤卓己『輿論と世論──日本的民意の系譜学』 »