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2008年9月 1日 (月)

東京国立博物館・国立科学博物館

 上野に行くと、私は必ず東京国立博物館に立ち寄る。とりわけ東洋館に思い入れが強い。中学生の頃に自由研究の課題で古代中国文明をテーマに選んで以来、現在に至るも毎年少なくとも2回以上は来ている。その思い入れについては、大学で考古学を志すも挫折したわだかまりも含めて以前に書いたことがある(→「博物館にまつわる思い出」の記事を参照のこと)。

 素っ気ない感じがした昔に比べると、現在の展示は工夫されていてかなり見やすくなっていると思う。本館の「日本美術の流れ」など簡にして要を得た展示となっているので外国人観光客には親切だと思うし、こまめに特集展示を入れ替えるのも良い。「震災と博物館」という特集展示では、関東大震災で崩れたジョサイア・コンドル設計の旧本館の写真を初めて見た。考古学資料が収められていた表慶館は現在補修のため閉鎖されているが、その代わり、平成館一階に設置されている考古学展示室は、モノという視点で石器時代から江戸時代まで日本史を通覧できる。

 平成館では大規模な特集展示が行なわれるが、2002年に開催された「日中国交正常化30周年記念特別展:シルクロード 絹と黄金の道」という展覧会が私には思い出深い。

 私は学生のとき、「考古学なんてやーめた」という感じになってしまったのだが、一応けじめとして卒業論文はしっかり書いた。中国新疆ウイグル自治区、タリム盆地南縁にかつて存在したオアシス・ニヤ遺跡(現在の町とは異なり、タクラマカン砂漠の中)がテーマ。発掘時期で内容を二分、前半は19~20世紀にかけて活躍した探険家オーレル・スタインの大部な報告書、Ancient Khotan(1907)、Serindia(1921)、Innermost Asia(1928)から関連箇所を抜き出してまとめ、後半は新疆文物考古研究所の紀要『新疆文物』掲載の論文や発掘レポートをもとに中共成立後の発掘成果をサーベイ。ゴミ捨て場の堆積物が層状になっていることに注目して、出土物、特に漢文文書・カロシュティ文書(スタインはもともとインド学者)の出土層位から遺跡の年代を推定することを軸にした(砂漠という特殊条件により、布や木簡、さらには人体などの有機物の保存状態が良好だった)。どうしても中国語文献を読む必要があり、第二外国語はフランス語だったので中国語は半年ほどで速習(もともと中国にも興味があったのだから第二外国語も中国語をとればよかったように今では思うが、中国語のクラスには女の子が少なそう(苦笑)という不純な動機がありました)、論文を書く作業の半分以上はとにかく中国語の辞書をめくることだった。実は、ゼミの授業には初めの1ヶ月出席しただけであとは卒業まで一度も顔を出さず、卒論テーマも指導教官に相談すらせずにいきなり提出するという今から思うと冷や汗もののとんでもないことをやっていた。幸い、名目上指導教官となってくださった先生は、とにかく自分の勉強さえしっかりやっていればそれでいい、という良い意味で古いタイプの方で(開き直ると、これこそリベラル・アーツだろう!)、卒論も、ほとんど出席しなかったゼミまでも成績はAをつけてくれて、本当に頭が上がらない。

 卒論を書くに当たって文献上でしか知らなかった出土品を、この「シルクロード 絹と黄金の道」展で初めて目の当たりにして少々感動的だった。しばらくの間、中央アジア関係のことは学生の時の自分自身のグダグダした嫌な思い出と結びついていたので目を向けたくないという時期もあったのだが、最近ではようやくその呪縛も消えつつある。

 国立科学博物館も学生の頃は時々寄っていた。自然史展示で古生物の化石とか、動物たちの剥製とか、特にグロテスクな生物のホルマリン漬けとか見るのが面白かった。改装されてから入館したのは初めてだと思うが、随分と様変わりしていて驚いた。以前よりもはるかに充実しているし、地球館で動植物を等身大に体感できる展示なんて本当に面白い。夏休み最後なのでガキどもが騒ぎまわっていて、いつもなら癇に障るところだが、ここだとむしろ一緒にはしゃぎまわりたいくらいだ。

 日本館にある、生物としての人間の形質から歴史を通覧できる展示もよくできている。昔の食生活や健康状態などは人骨から解析されるが、近年発見された江戸時代の女性のミイラもあって興味深い。ここの形質人類学的な展示と東博の考古学展示の2ヶ所を回れば、目で見る考古学概論としてたった一日でもかなりの勉強になる。

 以前は南極のタロ・ジロや渋谷のハチ公の剥製とか、アンデス文明のミイラとかもあったのだが見かけなかったな。どこに行ったのだろう?

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