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2008年8月11日 (月)

「スカイ・クロラ」

「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」

 この世界から戦争がなくならないのは、いわば人間の本性として考えるしかないのだろうか。戦争があって、はじめて平和のありがたみが実感される。“平和”な社会──この地球のどこかに悲惨な現実があるからこそ、それをニュースとして見る人々は“平和”の価値を謳いあげる。他者の痛みによって担保された逆説的な“平和”。

 戦争請負会社によってショーとして仕組まれた代理戦争。戦闘は“プロジェクト”と呼ばれる。戦闘機に乗るのは“キルドレ”──大人になることのできない、つまり戦死するまで永遠に生き続けることを宿命付けられた子供たち。映画全体の詳密にリアルな映像とは裏腹に、彼ら彼女らの表情はのっぺりと無機的な感じ。終わらない日常。生きることそのものの倦怠感。永劫回帰の実存的意味は想像するだけでも恐ろしい。

 映像が実に素晴らしい。広々とした空を後景にした奥行きのある立体感は人間の小ささを否が応でも際立たせる。大編隊の航空シーンなど圧巻ではあるが、いわゆる手に汗にぎるタイプの戦争アニメとは全く異質だ。この美しく雄大な空のイメージは、映画全体に漂っているかわいた透明感、空虚感を感傷的にまで強めてくる。

 原作は森博嗣の『スカイ・クロラ』シリーズ(中央公論新社)だが、私は未読。“平和”の虚構性というテーマへのこだわりが押井守にはあるのか、東京が事実上の戒厳令状態に置かれるシミュレーションを行なった「機動警察パトレイバー2 the movie」(1993年)なども思い出した。

【データ】
監督:押井守
原作:森博嗣
脚本:伊藤ちひろ
声の出演:加瀬亮、菊地凛子、谷原章介、栗山千明、竹中直人、他
2008年/121分
(2008年8月10日、新宿バルト9にて)

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