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2008年8月24日 (日)

「百万円と苦虫女」

「百万円と苦虫女」

 短大を出たものの就職できず、アルバイト生活中のスズコ。ひょんな事件がもとで警察の厄介になってしまい、家にも居心地のわるさを感じた彼女は「百万円貯まったら出て行きます」と宣言。とにかく知っている人の誰もいない所へ行こうと、海の家、山間の桃畑農家と百万円貯まるたびに転々と移る。そして、ある地方都市のホームセンターのバイトで自分を理解してくれそうな青年に出会うのだが──。

 スズコは「自分探しなんてむしろしたくない」と言う。色々なしがらみをことごとくリセットして、自分自身も含めてすべてがゼロの状態のまま生きていきたいという願望に突き動かされそうになることは私などにもよくある。しかし、どこへ行ったも人間関係はできる。しがらみ、なんて言ってしまうとマイナスの意味合いになってしまうが、スズコの行く先々で彼女自身の思惑とは別に図らずも良い信頼関係ができていく様子は観ていて安心感がある。

 それこそ苦虫を噛み潰したような感じにスズコはあまり笑顔を見せない。明るくはないが、かと言って陰気でもない、所在なげに佇む姿が自然になじんでいるのは、やはり蒼井優の演技力なのだろう。最初、岩井俊二監督「リリィ・シュシュのすべて」で彼女を観たときにはあまりパッとした印象はなかった。ところが、李相日監督「フラガール」での彼女の表情の取り方を観てハッとして、「リリィ・シュシュ」を観なおし、さらに熊澤尚人監督「ニライカナイからの手紙」、大友克洋監督「蟲師」、井口奈己監督「人のセックスを笑うな」と観た。以前、宮台真司がラジオの番組で、日本映画ファンは宮崎あおい派と蒼井優派に分かれる、と話していた記憶があり、その頃の私は宮崎あおい派だったが、今では完全に蒼井優びいきだ。

【データ】
監督・脚本:タナダユキ
出演:蒼井優、森山未来、ピエール瀧、笹野高史、佐々木すみ江、他
2008年/121分
(2008年8月3日、シネセゾン渋谷にて)

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