『酒井駒子 小さな世界』
例によって書店をふらついていたら、絵本情報誌『Pooka』の特別版、『Pooka+ 酒井駒子 小さな世界』(学習研究社、2008年)が目に入った(書影が見られるようアマゾンにリンクをはっておきます)。私は絵本にそれほど特別な興味はないけど、酒井さんの絵は大好きですぐに買った。彼女の活動は絵本やブックデザインが中心、画集などは見かけないので、色々な作品をまとめて見られるのはうれしい。
酒井さんの絵を初めて見かけたのは実は書店ではなくタワーレコードの視聴コーナー。world'send girlfriend「The Lie Lay Land」というCDのジャケットが酒井さんの絵だった。なぜか目を引き、ヘッドホンを耳に当てた。同時に両方のアーティストのファンになってしまった。
酒井さんの絵本では、小川未明『赤い蝋燭と人魚』、須賀敦子『こうちゃん』の2冊を持っている。銀座、教文館の児童書専門店「ナルニア国」で買った(絵本にはそんなに興味はないと言いつつも、ここに時々立ち寄って書棚を眺めていると楽しい)。売場のおねえさんから「プレゼント用に包装なさいますか?」と当然のような口ぶりできかれて、ちょっと口ごもりながら「…ええと、結構です」。絵本に趣味がありそうな風体はしておりませんので、何となく胡散臭く見られたかなあ、と気にかけるのも自意識過剰ですかね。
この酒井駒子特集本は、酒井さんの選んだいくつかのキーワードで章分けされている。一番初めが、「夜──昼間でも、夜のことを思っている。」私が酒井さんの絵で一番ひきつけられているのは黒の際立つ色調だ。子供を描いたものが多い。ぼんやりとした輪郭で、それが繊細さ、あたたかさを感じさせるのだけど、黒いトーンが引きしめてくれると言ったらいいのか。やわらかい哀感という言い方が適切か分からないが、表情の独特な余韻がとても好きだ。
書店で酒井さんの装幀になる本を見かけると必ず手に取って眺める。つい先日も、湯本香樹実『春のオルガン』(新潮文庫、2008年)をついつい買ってしまったばかり。他にも、恩田陸『不安な童話』(新潮文庫、2002年)、『蛇行する川のほとり』(中公文庫、2007年)、角田光代『だれかのいとしいひと』(単行本は、白泉社、2002年。文庫版は文春文庫、2004年)が手もとにある。ミシェル・ペイヴァーのファンタジー・シリーズ『オオカミ族の少年』『生霊わたり』『魂食らい』(評論社、2005~2007年、以下続刊)も装幀に引かれて読んだ。張芸謀監督の映画「至福のとき」のチラシにある少女像もいいなあ。
酒井さんは村山槐多が好きだというのがちょっと意外だった。
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