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2008年7月14日 (月)

奥野信太郎『中国文学十二話』

奥野信太郎『中国文学十二話』(NHKブックス、1968年)

 学生の頃に読んで以来、久方ぶりに手に取った。何だかなつかしい。もともとラジオ講座での語りをまとめたという経緯もあるが、随筆の名手として知られた奥野だけに、軽妙洒脱な語り口にたちまち引き込まれる。学説史的にゴテゴテ修飾した類いの概説書ではなく、中国文学の面白さ、文章の美しさ、そのあくまでも奥野自身の味わい方を流れるように語りつくすところが魅力的だ。刊行から四十年も経つが、今読んでも色褪せないと思う。

 詩経・楚辞から四大奇書・紅楼夢のあたりまでを語る。司馬遷の史記を評して、たとえば項羽を取り上げ、栄華の極みから転落に至る様を描き出す筆致はサディズムの文学だと言うのがちょっと面白い。六朝時代、遊仙思想がはやったが、不老長寿で現世を味わいつくしたいという願望を秘めている点で、有限の中に無限を求める老荘思想とは違うこと。唐代小説は“短編小説”なんて言われるが、確かに分量としては短いけれども、内容的には長編小説に発展できるだけのいわば筋書きと考えるべきこと。『聊斎志異』は怪異の世界と人間の現実世界とが二重写しになっており、その交錯するところに魅力があること。勘所のおさえ方に興味が尽きない。

 『南柯太守伝』とか『聊斎志異』とか出てくるたびに、小学生の頃、こういった中国伝奇小説を読みやすく日本語訳された本が好きで繰り返し図書館で借りて読んでいたのを思い出した。本の体裁は漠然と思い出せるのだが、どこから出ていた本だったか。もう一度読んでみたいな。

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