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2008年6月16日 (月)

東京都写真美術館「世界報道写真展~2008~」

 しばらく人知れず精神的に疲れていたので書き込みをさぼっていましたが、2週間ぶりに再開します。

東京都写真美術館「世界報道写真展~2008~」

 オランダに本部が置かれている世界報道写真財団に世界中から寄せられた写真の展示。さり気ない写真、凄惨な写真。たった一枚の写真でも、その背景に注意をこらすと、複雑な問題が絡み合っていることが芋づる式に見えてくる。

 暗闇の中、有刺鉄線に女の子用の白いドレスがひっかかっている。意味ありげな構図だ。キャプションを見ると、場所はエジプト・イスラエル国境。パレスチナ紛争がらみかと思ったが、違う。スーダンのダルフール難民が監視の眼をくぐってエジプト、さらにはイスラエルへと逃げ込み、その際にひっかかって残されたものだという。

 あるいは、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、マウンテンゴリラを引きずる人々の姿。マウンテンゴリラの生息頭数は著しく少なく、国際条約上、保護の対象となっている。密猟者を捉えた写真かと思ったらそうではなく、殺害されたマウンテンゴリラを発見し、運んでいる最中。下手人は、ルワンダからコンゴの密林に逃げ込んできたフツ族系武装勢力。ルワンダ大虐殺の実行犯として追われている。彼らによる森林伐採などの行動によって生態系は崩されてしまっているという。マウンテンゴリラ殺害の手口には、ルワンダ虐殺と同じものも見られるらしい。民族紛争と環境破壊の問題がこんなところで絡み合っている。

 最近は報道での扱いは小さくなってきているが、アフガンで展開するアメリカの軍事作戦は継続中である。パキスタンのベナジル・ブット元首相暗殺の瞬間をはじめ、ケニヤ、コンゴ民主共和国など選挙がらみの暴動の写真も目立つ。あからさまな暴力ではなくとも、児童虐待を受けたことをカミングアウトする人やレイプされた女性のポートレートは痛々しい。ポーランドのうらぶれたサーカス団、ウクライナのさびれた炭鉱町の風景には、旧共産圏の荒廃した様子がうかがえる。上海のコスプレ少女のなまめかしくも白い肌に眼を奪われる一方で、トルコ東部の山村、ようやく学校に通えるようになった少女たちの眼の輝きが凛々しく映る。

 ビルマ(ミャンマー)の軍事政権によって射殺された長井健司さん追悼のため、彼の手になる映像ドキュメンタリーが上映されていた。エイズにかかったタイの孤児たちの話。長井さんが亡くなった直後の報道番組で見たことがあったが、改めて見てやはり胸がつかれる。
(2008年6月15日、東京都写真美術館にて。8月10日まで開催)

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