「モンテーニュ通りのカフェ」
最近噂の映画「靖国」の公開初日、渋谷のシネ・アミューズに行った。警官やら報道陣やらと物々しい空気が漂う。昼頃に行ったのだが、席は埋まっていて夜の7時の回まで入れないという。混雑は予想していたものの、シネ・アミューズの2スクリーン両方で上映しているにもかかわらず、これほどとは驚いた。右翼の妨害というのも、なかなかの広告効果を生むものだ。このまま帰るのも癪なので、近くのユーロスペースまで足をのばして「モンテーニュ通りのカフェ」を観ることにした。
「モンテーニュ通りのカフェ」
パリの繁華街、セレブたちの集まる街。有名人も、劇場やホテルの従業員も息抜きに来るバー・デ・テアトルでジェシカ(セシール・ド・フランス)はギャルソンとして働き始めた。
世界的に有名にはなったが、自分がやりたいのはこんな音楽じゃないと悩むピアニストと、マネージャー役のその妻。テレビでは大人気だが本当は映画に出演したい女優。長年収集してきた美術品をすべてオークションにかけることにした資産家の老人と、彼に反発してきた学者肌の息子フレデリック(クリストファー・トンプソン)。ミュージシャンになりたかったが夢が叶わず、劇場管理人としての仕事の定年を間近に控えた女性──彼ら彼女らが人知れず抱える葛藤を、ジェシカを進行役に描き出していく。
ジェシカがフレデリックと語るシーン。携帯電話が鳴って彼は「クソッ、どこのどいつだ!」と悪態をつく。対して、ジェシカのセリフ、「人間には二つのタイプがあるわ。一つは、携帯が鳴ると、どこのどいつだ!って罵る人。もう一つは、私みたいに、誰かしら?って胸をときめかすタイプ」。
ジェシカ役、セシール・ド・フランスの気取らず軽やかに颯爽とした姿が本当に良い感じだ。一つ一つの出会いを心の底から楽しんでいる雰囲気が自然ににじみ出ている。天真爛漫な女の子(といっても、彼女はもう30歳前後のようだが、そう見えない)がトリックスターになって街の人々を描き出していくという群像劇はフランス映画によくある。例えば、タイプはちょっと違うけど、オドレイ・トゥトゥ主演の「アメリ」も好きだったな。
【データ】
原題:Fauteuils d`orchestre
監督:ダニエル・トンプソン
脚本:ダニエル・トンプソン、クリストファー・トンプソン
2005年/フランス/106分
(2008年5月3日、渋谷、ユーロスペースにて)
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 【映画】「新解釈・三国志」(2020.12.16)
- 【映画】「夕霧花園」(2019.12.24)
- 【映画】「ナチス第三の男」(2019.01.31)
- 【映画】「リバーズ・エッジ」(2018.02.20)
- 【映画】「花咲くころ」(2018.02.15)
コメント