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2008年5月26日 (月)

Don Cheadle and John Prendergast, Not on Our Watch: The Mission to End Genocide in Darfur and Beyond

Don Cheadle and John Prendergast, Not on Our Watch: The Mission to End Genocide in Darfur and Beyond, New York: Hyperion, 2007

 スーダンのダルフール問題について日本語の手頃な本が見当たらなかったので本書を手に取った。タイトルは、我々の見えないところで起こっている出来事、という意味合いになるだろうか。映画「ホテル・ルワンダ」で主演を務めたのをきっかけにアフリカの問題に開眼した俳優ドン・チードルと人道問題で活動を続けるジョン・プレンダーガストの共著。スーダンをはじめアフリカの紛争についての解説、実際に難民キャンプを歩き、見て、話を聞いた写真つきのルポルタージュ、そして我々は何をすべきなのかという具体的な提言がまとめられている。ホロコーストを生き残ったノーベル賞作家エリ・ヴィーゼルや、現在、民主党の大統領候補になりそうな情勢のバラク・オバマなどが序文を寄せている。

 現在イスラム国家と宣言している国は世界に二つある。イランとスーダンである(ただし、前者はシーア派、後者はスンナ派)。スーダンはもともとイギリス・エジプトの共同統治という形をとっていたが、1956年に独立。それ以来、イスラム教徒が多い北部とキリスト教や精霊信仰の黒人が多い南部との対立が続く。1969年にヌメイリ将軍がクーデターをおこしたが、人気がなかった。国内的な支持を得るためにムスリム同砲団などイスラム過激派を政権内部に取り込み、とりわけイスラム法学者ハッサン・アル・トゥラービーが法務大臣となり、アラビア語公用語化、イスラム法の施行などイスラム化政策を進める。南部との武力紛争が泥沼化したため、いったん停戦合意がかわされたが、1989年に全国イスラム戦線(NIF)のバックアップを受けたバシール将軍が政権を奪取、イスラム化政策は継続中。一時期、オサマ・ビン=ラディンもスーダンにかくまわれていたが、アメリカの圧力を受けて追放、彼はアフガニスタンに逃れた。

 スーダン情勢をさらに複雑にしているのが、西部のダルフール紛争である。ダルフールとは、アラビア語でフール族の土地という意味。この地に住むフール族、ザガワ族、マサレイト族もムスリムだが、アラブ人ではない。北部と南部の対立はムスリム・非ムスリムの対立と言えるが、ダルフールでは同じムスリムでも、アラブ系が非アラブ系を虐殺するという構図を取っている。おそらく遊牧民なのだろうが、ジャンジャウィードというアラブ系民兵組織に政府は武器を供給、彼らは非アラブ系部族の村を焼き討ちし、レイプや殺戮を恣にしている。飢餓も戦略的な手段として使われ、数万人単位で殺され、また隣国チャドに難民として逃れている。

 具体的な提言としては、まず三つのPを挙げる。つまり、Protect→虐殺を止めさせるために軍事介入も含めたあらゆる手段を取ること。Punishment→虐殺の実行者を国際裁判にかけること。Promote Peace-keeping→平和な状態が維持されるよう促すこと。これらを実行できるのは国際社会、とりわけアメリカは主たる役割を果すパワーを持っているので、アメリカ政府を動かすために市民的な活動を展開するよう本書は呼びかける。具体的には、Raise Awareness→どんな問題が起こっているのかみんなに知ってもらう。Raise Funds→出来る範囲でお金を出し合う。Write a Letter→社会的に影響力のある人に手紙を書く。Call for Divestment→問題のある国と利害関係を持つ企業から投資を引き上げる。Join an Organization→NGOに加わる。Lobby the Government→政府に働きかける。

 北京オリンピックの聖火リレーでは中国政府に対する抗議のデモが世界各地で行われた。もちろんチベット問題が一番の理由だが、ヨーロッパではダルフール問題で中国に抗議する声も大きかった。スーダン政府が南部・西部に対して圧迫を強めている背景には石油利権を独占しようという意図がある。中国はその急速な経済発展につれて、資源確保のためアフリカ外交を積極的に展開しているが、それが結果としてアフリカ各国の独裁政権の延命に手を貸すことになっている(→ポール・コリアー『最底辺の10億人』の記事を参照のこと)。国連安全保障理事会でスーダンに対する制裁決議を通そうにも、中国が拒否権をちらつかせるので何も出来ないままだ。

 本書にはバラク・オバマが序文を寄せているほか、オバマ陣営の外交政策アドバイザーになったハーバード大学のサマンサ・パワー(ただし、ヒラリーを悪魔呼ばわりしたことが批判を受けて選挙スタッフからはずれた)についても本書ではたびたび言及される。もしオバマが大統領に当選したら、アメリカ政府がアフリカ問題に積極的に介入する可能性も出てきそうだ。

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