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2008年4月 3日 (木)

「春夏秋冬そして春」

「春夏秋冬そして春」

 ゆたかに茂った木々は季節に応じて鮮やかな色合いを見せる。山あいの湖上、朝もやの中に浮かぶ堂宇。ところどころ唐突に立っている扉は俗界との境を表わしているのだろうか。

 世捨て人同然の日々を送っている老師と少年。子供らしい残酷な好奇心で魚、蛙、蛇に石をくくりつけて殺してしまうのを少年は見咎められてしまう。心に刻み込まれた罪の意識。長じては、心の病で療養に訪れた少女と過ちを犯してしまう。「愛欲は執着を生み、執着はついには殺意を生む」──老師の言葉を背に受けながら彼は少女のあとを追って山をおりていく。

 春夏秋冬、季節の移り変わりを人生の転変になぞらえながら描き出した、叙情詩とも言うべき本当に美しい映画だ。ある意味で逃れられないサイクルの中で繰り返される人間の罪と贖罪。その一切を引き受け、石を引きずるように生きるしかない。ふと、永劫回帰なんて言葉も思い浮かべた。

 キム・ギドクの映像には、清潔な緊張感がピンと張りつめた厳しさがある。それがまた哀しみ、切なさといった感情を浮かびあがらせるのにぴったりとはまるように美しい。私が初めて観たのは「魚と寝る女」(2000年)だったと思う。まだ韓流ブームのおこる前だった。グロテスクな感じもしたが、寓話的なストーリーと独特な映像構成はいまでもよく覚えている。「サマリア」(2004年)、「うつせみ」(2004年)でようやくキム・ギドクの名声が高いことを知った。とりわけ、「サマリア」の哀しい美しさに印象は深く、とても好きな映画だ。

【データ】
監督・脚本:キム・ギドク
2003年/韓国・ドイツ/102分
(2008年3月31日、ビデオにて)

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