「PiCNiC」
「PiCNiC」
前時代がかった精神病院の光景がいきなり目を奪う。カラスの羽を全身にまとったココ(Chara)は、いつも本を読んでいる無口な青年ツムジ(浅野忠信)、彼を慕うサトル(橋爪浩一)と出会った。
もらった聖書を読んでいたツムジは言う。
「おい、世界は滅亡するぜ。この本に書いてある」
「じゃあ、見に行こうよ」
「何をだよ」
「世界の終わりを見に行くの!」
塀の上を歩いて旅をするという設定がおもしろい。この映画を観たとき、私自身がある種の行き詰まりがあってかなり暗い気分を抱えている時期だった。そうした自身の感情を投影したせいか、三人が病院の塀から外を眺めるときの街の風景に新鮮な解放感が感じられた。映画のラスト、海辺の夕景をバックにココが崩れ落ち、黒い羽が舞い上がるシーンが何とも言えず美しい。
岩井俊二の映画を私が初めて観たのは出世作「Love Letter」ではなく、この「PiCNiC」だったと思う。暗いストーリーだが、凝りに凝った映像の美しさと叙情的なピアノのメロディーでこの映画に引き込まれ、そのまま岩井映画ファンになってしまった。観たのは確かシネセゾン渋谷、「Fried Dragon Fish」と併映されていた。「Love Letter」はその後、池袋の(昔の)文芸坐で観た。ちなみに、この「PiCNiC」がきっかけとなって浅野忠信とCharaが結婚したのではなかったか。
【データ】
監督・脚本:岩井俊二
出演:浅野忠信、Chara、橋爪浩一、伊藤かずえ、鈴木慶一、他
1994年/68分
(2008年3月30日、ビデオで)
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 【映画】「新解釈・三国志」(2020.12.16)
- 【映画】「夕霧花園」(2019.12.24)
- 【映画】「ナチス第三の男」(2019.01.31)
- 【映画】「リバーズ・エッジ」(2018.02.20)
- 【映画】「花咲くころ」(2018.02.15)
コメント