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2008年3月 3日 (月)

「明日への遺言」

「明日への遺言」

 1945年3月、アメリカ軍による名古屋への無差別空襲で市民に多くの犠牲者が出た。撃墜された爆撃機の搭乗員が捕虜となったが、ただちに処刑された。戦後、正規の手順を踏まずに米兵を処刑したことが戦争犯罪とみなされ、東海軍司令官・岡田資(たすく)陸軍中将及び彼の部下たちが横浜のBC級戦犯裁判で法廷に立たされることになる。無差別爆撃は明らかに国際法違反であったにもかかわらず、敗戦国だからという理由で日本は一方的に責められる。岡田は、この裁判闘争を“法戦”と呼び、部下の責任はすべて自身が一身に引き受ける覚悟で臨む。

 映画冒頭でも示されるように、都市への無差別爆撃は1936年、ドイツ軍によるゲルニカ爆撃、日本軍による重慶爆撃に始まり、第二次世界大戦が激化するにつれて枢軸国・連合国双方がやり合うようになって、ドレスデン空襲、東京大空襲、そして広島・長崎で極点に至る。非戦闘員を巻き込んだ無差別爆撃の責任判定はなかなか難しい。まず、指揮命令系統で誰に責任を負わせるかという問題がある。それ以上に、国際法違反という点で考えると、日本ばかりではなく米軍側の違反も明白であるものの、戦勝国が自らの戦争犯罪を裁くはずもない。結果、日本側の非ばかりがクローズアップされ、戦勝国側の問題は不問に付される。

 公平を期すために記しておくと、アメリカ人弁護人の奮闘振りはやはり敬意に価する。もちろん、“正義”を演出すること自体がアメリカ側の戦略にかなうことであったとしても、東京裁判のある被告も漏らしていたように、立場が逆だったら日本人弁護人はアメリカ人被告のためにここまで熱心に弁護をしたかどうかは分からない。

 この映画の主眼は戦争責任問題ではなく、戦後の混乱で日本人が右往左往している中、あくまでも毅然とした態度を取った一人の男の姿を静かに描くところにある。裁判に関わったアメリカ人たちも含め、それぞれに立場を超えて共感し合ったヒューマン・ドラマと捉えるべきだろう。演出はちょっと古くさい感じもするが、まあ、これはこれでよし。

【データ】
監督:小泉尭史
原作:大岡昇平『ながい旅』
出演:藤田まこと、富司純子、西村雅彦、蒼井優、他。
2007年/110分
(2008年3月2日、新宿ミラノ2にて)

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