「テラビシアにかける橋」
「テラビシアにかける橋」
ジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)の特技は絵を描くこと。でも、家は貧しいのでいつまでも夢なんか見ているなとお父さんからよく叱られる。学校にはいじめっ子。慕ってくれるのは妹のメイベルくらいだけど、ついつい邪険にしてしまう。そうそう、特技がもう一つ、駆けっこがはやいのも自慢だったのに、転校生の女の子に負けてしまった。
その子の名前はレスリー(アナソフィア・ロブ)。隣に引っ越してきたばかり。スポーツも勉強もよくできるけど変わっているので彼女もクラスで浮いている。意気投合した二人は放課後、森の中へと分け入った。レスリーはイマジネーションを豊かにふくらませ、一つの王国をつくり上げる。名付けて、テラビシア──。
ファンタジーは決して現実逃避ではない。学校でのいじめ、家の貧しさ、そして親友との死別…。耐え難い現実に直面したとき、どうしても視野が狭くなって立ちすくんでしまう。しかし、別のストーリーに置き換えてみることで、困難と闘う勇気や悲しみを受け入れ、乗り越える力を得られる。ラストのあたりでは不覚にも涙腺がゆるみ、何となくストーリー的には宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を、映像のイメージとしては去年観た「パンズ・ラビリンス」を思い浮かべた。子役二人がよくはまっている。特にレスリー役・アナソフィア・ロブのボーイッシュにのびやかな感じがとても良い。
余韻をかみしめたくてキャサリン・パターソン(岡本浜江訳)『テラビシアにかける橋』(偕成社文庫、2007年。単行本は1981年)を手に取った。訳者解説によると、著者自身の息子の親友が死んでしまったのをきっかけにこの物語を書き上げたらしい。児童文学は大人になってもその年齢なりの読み方ができる。なかなかバカにはできない。
【データ】
原題:Bridge to Terabithia
監督:ガボア・クスポ
2007年/アメリカ/95分
(2008年2月3日、新宿ミラノにて)
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