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2008年1月23日 (水)

新井一二三『中国語はおもしろい』

新井一二三『中国語はおもしろい』(講談社現代新書、2004年)

 先日、台北でぶらぶらと書店を歩き回っていたら、新井一二三という人の本が平積みされているのをよく見かけた。タイトルからすると日本文化論、東京論といった感じ。訳者名は併記されていなかったから中国語で書かれたのだろう。その時はとりたてて気に留めなかったのだが、帰国してから調べたら本書があるのを知った。経歴をみると、香港・台湾など中国語圏で文章を発表しているジャーナリストのようだ。

 語学の入門書的な本というのは、分かりやすく書かれてはいてもどこか無味乾燥になってしまうのは否めない。本書の場合、中国語圏の概略から生活事情まで著者自身の体験談を織り交ぜて語るうちに、さらりと発音や文法、中国語の勉強法に触れてくれるので呑み込みやすい。「通じないからこそ通じる」という逆説が面白い。“中国語”と一言で言っても上海語、広東語、閩南語、客家語などなど、それぞれに方言どころか別言語と言ってもいいくらいのバリエーションがある。普通話(プートンホア=標準語)をしゃべっても、なまりがあって当たり前。だからこそ、互いに分かり合おうという意志が強く働くから、外国人にとっても参入障壁は低いというのは勇気づけられるじゃないか。なまりを隠そうとする日本人(大阪人は除く)とは言語世界が明らかに違う。普通話─各省ごとの共通語─故郷の方言、という具合に多層的なアイデンティティ構造となっているという指摘も興味深い。

 私は中国語は苦手なくせに、台北でも書店をみつけてはもぐり込んで本をごっそり買い込んでいた。とりわけ、本書の著者がお薦めする誠品書店は私もお気に入り。台湾の書店をうろついていると、村上春樹をはじめ日本の文学作品がおびただしいまでに翻訳され、それが新刊・ベストセラーのコーナーでしっかり売られているのがすぐ目につく。このあいだなど、島田清次郎という大正時代のマイナーな作家の翻訳が新刊で出ていて驚いた。本書の著者が指摘するように日本文化は輸入一辺倒ばかりではなく発信力をきちんと持っていると言える。それと同時に、同じ小説を読めるということはそれだけ感性面での共通性があるという証拠でもあって、その点に私は強く関心を持っている。

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