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2008年1月14日 (月)

台北を歩く⑨台湾大学にて

(承前)

 歩いてMRT芝山駅に出た。淡水線に乗り、台北中心部を突っ切って南の公館駅で下車。ここは学生街である。

 台湾大学に行った。写真72は正門。衛視室は古い写真で見るのと全く変わらない。キャンパスは広々としており、学生は自転車で移動している。図書館までまっすぐにのびる椰子並木道が実に壮観だ(写真73写真74)。写真75は並木道沿いにあった建物。「国家科学委員会/人文学研究中心」となっている。赤レンガの風合いがレトロに重々しい。戦前の台北帝国大学の時の建物を現在でもそのまま活用している。撮影に失敗してしまったが、写真76は傅斯年ベル。戦後、新制の国立台湾大学初代学長を記念した鐘である。キャンパス内にまで路線バスが入ってきており、その停留所が鐘の前にあった。写真77が並木道の突き当たりにある図書館。

 理学部の校舎の前を通りかかったら、教室で原子物理学について展示をしているのでお気軽にどうぞ、という看板を見かけた。これを口実に校舎に入ってみた。展示教室では年配の女性が一人見ているだけ。あまり興味はないのですぐに退室。廊下をぶらぶら歩く。私は見た目として院生くらいの年齢なので、学生たちとすれ違っても不審がられることはない。日本でも戦前から続く大学のキャンパスだと古い校舎を直し直し使っていることがあるが、内装はそうした校舎と全く変わらず、外国の大学にいるという実感がわかない。歩いている学生の顔立ちも服装も日本人と見分けがつかないし。弁当を手にした学生が教室を覗き、「あ、ここ使ってる」という感じに場所探しをしている姿もなつかしい。

 台湾大学前の大通りは羅斯福路という。ルーズベルトのことらしい。正門からこの通りを挟んだちょうど真向かいに吉野家があった。話のタネにでもと入ってみる。カウンターで頼み、トレーに出た牛丼を持って席に着くのだが、内装はちょっとしたファミレス風。時間帯がずれていたのか空いており、何人か勉強している台湾大学生を見かけた。

 豚汁は甘めだが問題はない。キャベツの浅漬けは甘すぎる。紅生姜はなく、代わりに生姜の甘酢漬けがテーブルに置いてあった。牛丼そのものは米も普通で特に問題はない。ところで、中国や韓国と同様、台湾でも器を手に持って食べることは不作法とされる。一応気にしているので丼を置いたまま箸でこぼしながら米粒をすくっていたのだが、非常に食べづらい。牛丼はやはりガーッとかきこむのでないと、食べたという爽快感がない。周囲を見回すと、まず牛肉を箸でつまんで口に入れ、それからレンゲでご飯をすくって食べていた。微妙なところだが、食習慣の違いが見えて面白かった。

 台湾大学の周辺には書店が多いと聞いていたのでぶらぶら散歩。大学正門前の交差点脇には誠品書店の支店。店内はきれいだし、書棚の揃えも充実している。新生南路沿いに北へ行くと、日本式家屋を見つけた(写真78)。この家の前から横丁に入ると、台湾e店という書店がある。“e”にあたる文字を変換できないのだが、台湾語で“の”を意味するらしい。つまり、“台湾の店”。台湾人アイデンティティーをコンセプトとしており、台湾の歴史や文化についての本が充実している。5冊ほど買い込んだ。

 裏手の通りに入ると、宅地の中にカフェなどの店が混在している区域。喫茶店の窓越しに、勉強している台湾大学生の姿が見えた。羅斯福路を南に渡ると、にぎやかな商店街。“挪 威森林”という喫茶店(写真79)。つまり、『ノルウェーの森』。村上春樹好きが開いた店らしい。

 古本屋があったので入ってみた。店先のダンボール箱に二束三文の漫画やライトノベルが詰め込まれていた。店内に並べられているのが中国語の本であるということを除けば、日本でも見かける昔ながらの古本屋のイメージそのまま。ほこりっぽい空気が実になつかしく、落ち着く。丸川哲史「台北書店めぐり」(『未来』463号、2005年4月)によると、台湾の古書店には戦前に刊行された日本語の古書もかつてはたくさんあったらしいが、噂を聞きつけた日本人研究者がごっそり買いあさったため、今ではまったく見かけないという。

 南天書局も台湾関係の書籍が充実しているらしいので探したのだが、見つからず。校園書局はなぜか宗教書が多い。金石堂書店は標準的な書店という感じだろうか。外国文学の棚をみると、日本が2棚、韓国・美国(アメリカ)・英国が1棚ずつ、その他で2棚という配分。新刊・ベストセラーのコーナーでは日本語からの翻訳ものが目立つ。携帯小説の『恋空』まで平積みされていた。映画は台湾でも上映される予定らしく、オビに新垣結衣の写真があった。

 日本にいたときに台湾文学について調べて朱天文・朱天心姉妹、李昂、白先勇、舞鶴といった名前を頭に入れておいたのだが、実際に街中の新刊書店をひやかしてみると、あまり見かけない。棚ざしで1冊ずつあればいい方だ。書店では網路文学(ネット文学?)・励志文学(ライトノベル?)の藤井樹や九把刀(Giddens、ギデンズ)の本がよく目立った。中国文学を専攻する大学の先生たちと実際の一般読者とでは大きな乖離があるようだ。文学としてのクオリティーはひょっとしたら低いのかもしれないが、それもひっくるめてトータルに紹介してくれないと、現代台湾事情が見えてこない。なお、藤井樹はペンネームらしいのだが、“ふじい・いつき”と読んでいいのだろうか? 岩井俊二監督「LOVE LETTER」の主人公の名前だ。

 リュックサックに詰め込んだ本の重みで肩が痛いので、いったん宿舎に戻ることにした。公館駅でMRT淡水線に乗り、民権東路駅で下車。

(続く)

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