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2007年12月12日 (水)

佐藤優の新刊続々

 先月末から今月にかけて佐藤優の新刊続々。『国家の謀略』(小学館)『私のマルクス』(文藝春秋)『野蛮人のテーブルマナー──ビジネスを勝ち抜く情報戦術』(講談社)『国家と人生──寛容と多元主義が世界を変える』(太陽企画出版)。全部買ったが、取り敢えず後者2冊を斜め読み。

 『野蛮人のテーブルマナー』は、ビジネスライフにも応用できるようにインテリジェンスの極意を披露という趣旨。こういう処世術は本を読んで身に付くものでもないからな。処分候補の段ボール箱に放り込んだ。

 『国家と人生』は竹村健一との対談。竹村の発言は自慢ばっかりなのでとばして読む。佐藤の発言で興味を持ったのは次の3点。

①読書術。速読と熟読との使い分け。速読は、その本が必要な本かどうか判断をつけるためで、分かる箇所は飛ばし読みする。本当に読むべき本を熟読するために、その他の本は速読で片付けるという考え方。飛ばし読みできるためには基礎学力が必要。

②異なる価値観の共存できる多元性を確保するため、権威と権力とを分離したシステムが日本の伝統。大統領制になったらとんでもない衆愚政治がはびこってしまう。どんなに権力や財力があっても、絶対に頭が上らない権威があってはじめて抑えがきく。その権威の担い手として皇統の連続性が不可欠。ここまでの議論は理解していたが、戦争をやって天皇に責任がかぶせられるとその連続性が失われてしまうので交戦権を放棄、こうしたロジックで護憲の立場に立つという主張は本書で初めて知った。

③山川均の非武装中立論について、実は共産革命を防止するためのロジックが潜んでいたという指摘には目から鱗が落ちた。つまり、ソ連や中共は革命の輸出で日本国内を煽動し、それに乗って軍隊がクーデターをおこしてしまう恐れがある。それを防止するため当面は非武装中立という考え方だったらしいが、山川の死後、社会党はこうした含みを捨ててしまったという。日本のオールド・ソシャリスト(という言い方があるのか知らないが、私は売文社を思い浮かべている。共産党は含めない)は結構冷静に物事を見ていた。戦後の薄っぺらな左翼とは質が違う。たとえば、売文社で山川の仲間だった高畠素之は、ソ連には社会主義と膨張的帝国主義とが共存していることをつとに喝破していた(「労農帝国主義の極東進出」『改造』昭和2年)。

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