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2007年12月16日 (日)

「アフター・ウェディング」「ある愛の風景」

 家族というかけがえのない関係は、人が入れ替わっても成り立ち得るのだろうか? デンマークのスサンネ・ビア監督「アフター・ウェディング」をはじめに観たときにはピンとこなかったのだが、続けて同じく「ある愛の風景」を観て、そうしたテーマで通じているように思った。

 「アフター・ウェディング」はインドの孤児院のシーンから始まる。その運営にあたるヤコブは資金援助の説得のためデンマークに戻った。大企業を経営するヨルゲンに面会したところ、何の気まぐれか、娘の結婚式に招待される。出席してヤコブは驚く、ヨルゲンの妻は彼の昔の恋人で、その娘というのは別れる間際に妊娠させていた彼自身の娘であった。ヨルゲンは難病で死期が迫っており、自分の死後も家族が困らないよう、ヤコブに父親の役割を担わせようと手筈を進める。かつての恋人と死を間近にした今の夫。実の父と育ての父。初めは傲岸不遜に見えたヨルゲンだが、冷静に手を打っているように見えながら、家族それぞれの想いに引き裂かれる姿が痛々しい。

 「アフター・ウェディング」は父親役、夫役を入れ替えようとする話だが、対して、一人の人間で人格が変わってしまった場合、それを家族は受け入れることができるのか?

 「ある愛の風景」は刑務所から出所するヤニックを兄ミカエルが出迎えるシーンから始まる。ミカエルは優秀な軍人で、弟の不始末にも配慮が行き届き、ヤニックは反発しつつも信頼している。出所のちょうど翌日、ミカエルは平和維持軍の任務でアフガニスタンに向かったが、作戦の途上、ヘリコプターが撃墜されてしまう。戦死の知らせに悲嘆にくれる家族。ショックを受けたヤニックは気持ちを入れ替え、残された義姉のサラや子供たちのために心を砕く。

 ミカエルは生き残って現地のゲリラ勢力の捕虜となっていた。同じく捕虜となっていたもう一人の兵士が弱音を吐くと、「もちろん、人間はいつか死ね。だけど、ここじゃない。必ず戻れるさ」と励ました。しかし、その直後、ゲリラからその兵士を殺すよう命じられた。愛する妻のもとへ戻りたい一心で、彼は手を下してしまう。絶望的な局面にぶつかったとき、人は信頼を裏切ることがあり得るのを自分自身の中に見てしまった。彼の心の中で何かが崩れた。無事帰国できたものの、妻と弟の関係に疑心暗鬼を募らせ、人が変わったように荒れ狂う。

 人と人とが無条件で信頼感を置けるというのは、よくよく考えてみると不思議なものだ(そうではない家族もいるのだろうが…)。インドの孤児院やアフガンの戦場といったモチーフは、家族という内向きに安定した関係に対し、全く異質なものをつきつける効果を際立たせている。

「アフター・ウェディング」
2006年/デンマーク/119分
(2007年12月14日レイトショー、シネカノン有楽町2丁目にて)

「ある愛の風景」(英題:Brothers)
2004年/デンマーク/117分
(2007年12月15日、シネカノン有楽町2丁目にて)

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コメント

こんにちは、お久しぶりです。

胡蘭成というキーワードでサーチしたら、トゥルバトゥールさんのHPにヒットし、ちょっと笑ってしまいました。世の中、狭いですね。

とても読み応えのあるブログで、感激しました。こういった活動を続けていくのは大変だと思いますが、お互い、続けて行きましょう。

それでは、またご一緒できる機会を楽しみにしております。失礼します。

投稿: 渡辺真也 | 2007年12月16日 (日) 08時31分

 渡辺さん、どうもこんにちは。その時の気分でダラダラ書き流しているだけですので、過分のお言葉をいただき、恐縮してしまいます。

 ところで、渡辺さんから以前にもコメントをいただいたことがありましたっけ(こんなお尋ねは失礼だとは思いますが…)? あるいは、違うハンドルネームでいただいたのかもしれませんね。いずれにせよ、ご縁を新たに、これからもよろしくお願いします。

投稿: トゥルバドゥール | 2007年12月18日 (火) 14時46分

いえ、コメントをしたのははじめてです。自分と似たテーマを追っているキュレーターがいる、というのは、私にとっても救いです。たまには私のブログにも遊びに来て下さい。ではでは。

http://blog.goo.ne.jp/spikyartshinya

投稿: 渡辺真也 | 2007年12月19日 (水) 15時40分

ひょっとして、別のどなたかと勘違いされてはいませんか? 私はキュレーターではないので…。ですが、ブログを拝見して、渡辺さんのご活動にはとても興味を持ちました。どこでどんな縁が転がっているか思いもよらず、不思議な感じです。

投稿: トゥルバドゥール | 2007年12月20日 (木) 10時52分

なーんだ、人違いだったのですね。私はてっきり、キューレーターのE・Mさんだと思ってました。また遊びに来ますね!

投稿: 渡辺真也 | 2007年12月20日 (木) 16時13分

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