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2007年11月19日 (月)

台湾に行ってきた⑧(国父紀念館、そして帰国)

(承前)

 誠品書店敦南本店から次のお目当ての国父紀念館までぶらぶら歩いていった。国父とはもちろん孫文のことである。中山公園(写真31写真32)。中山とは孫文の号。国父紀念館の向こうに見える高層ビルは台北101、金融関係の機能が集まっている。公園内は普通の公園として開放されていて、人々が思い思いに散歩したり、剣舞したり、社交ダンスの練習をしたりとのどかな光景。

 国父紀念館の入館は無料。中では中華民国及び台湾の歴史と孫文の歩みを紹介する展示が行なわれている。総統府や二・二八紀念館ではどちらかというと日本に好意的な内容だったが、対してこちらは、中華民国の正統性を示すのが目的であるだけに、むしろ抗日運動に重きが置かれている。華僑ネットワークの広がりを示すパネルもあり、その点でも台湾人意識を強調する総統府や二・二八紀念館とは基本的なコンセプトが異なることが分かる。中心は大ホールとなっており、何やらテレビ番組収録の準備をしていた。

 孫文の経歴において、宮崎滔天、頭山満、犬養毅をはじめとした日本人との交友はよく知られているが、そういった日本との関わりについてはほとんど無視されていた。唯一、孫文と山田純三郎とが並んだ写真が掲げられていたが、山田とは何者なのかを説明するキャプションはなかった。山田純三郎は中国革命のために献身的な支援活動を行ない、孫文の死の間際、その枕頭に身内や汪兆銘、戴天仇など革命の指導者たちが集まる中にいたほど孫文から信頼されていた。純三郎の兄・山田良政は1900年の恵州起義で孫文と共に戦い、戦死している。

 正面の大広間には孫文の巨大な座像がまっすぐ前を見据えている。その足もとには常時、捧げ銃をした直立不動の儀仗兵が二人、あたかも蝋人形のように文字通り微動だにしない。知的障害者らしい人が近寄って触っていたが、それでも眉ひとつ動かさないのはさすがだ。

 展示を見ていたら、ガシャン、ガシャン!という激しい物音がこの大広間から響いてきた。行ってみたところ、儀仗兵の交替式が行なわれていた(写真33)。直立不動はさすがにきついわけで、1時間ごとに交替している。その際、小銃の銃床を石床にたたきつけたりクルクル回転させたりとちょっとしたパフォーマンスが演じられる。任務を終えた儀仗兵は、旧ドイツ軍のようなきびきびとした、しかし極度にスローモーションなグースステップで退場していく。厳粛な空気の中、私も含め観光客がパシャパシャとカメラの音を立てる。扉を隔てたすぐ外でおばさんたちが社交ダンスの練習に励んでいるというのも奇妙なのどかさだ。

 国父紀念館駅からMRTに乗って台北駅で下車。台湾滞在最終日は孫文特集。といっても、孫文は台湾にそれほどのゆかりはない。中華民国の正統性を示すため無理やりにでも孫文の台湾における足跡を強調しようとしているが、辛うじてその題材として使える場所がこれから行く国父史蹟紀念館、通称“梅屋敷”である。

 こちらは逸仙公園となっている(写真34)。逸仙とはやはり孫文の号である。ここはかつて日本統治時代の旅館で、孫文は台湾に立ち寄るたびに宿泊したという。純和風建築(写真35写真36)で、中には孫文にまつわる展示。べこべこした畳の上を歩く。床の間に孫文の銅像と青天白日旗があるというのが面白い(写真37)。庭園の池には鯉が泳いでいる。四阿には蒋介石による碑文(写真38)。背後に見えるのは台北駅である。

 台北の街を中山駅あたりまでぶらぶら歩く。新光三越百貨店南西店の上にのぼり、Hが大のお気に入りである欣葉で昼食をとった。それから再び台北駅方面へと街並みを見ながら歩き、途中、やはりHおすすめの大衆食堂で二度目の昼食。Hと歩いていると胃袋がいくつあっても足りない。廣州炒飯を食べたが、値段の割にはなかなかうまくて満足。

 荷物を預けてあったYMCAホテルに戻る。お土産を買うため、すぐ近くの新光百貨店台北駅前店のデパチカに降りた。普通に醤油やらとんかつソースやら置いてあって、雰囲気から品揃えまで日本と全く変わらず、デパチカという呼び方に違和感がない。

 台北駅前から高速バスに乗って桃園国際空港へ。16:15発の成田行きチャイナ・エアラインに搭乗。機中で司馬遼太郎『台湾紀行』を読了。日本時間20:00過ぎに無事帰国。

 色々と心残りはある。侯孝賢の映画が好きなので、彼の映画の舞台としてよく登場した九份まで足をのばしたかったし、誠品書店だけは行ったものの台北市内の書店街や映画館街もまわれなかった。古い建築物のチェックもおろそかになっていた。今回は時間的な制約で強行軍となってしまったが、次回は地図片手に一人でぶらりと来るつもりである。

(了)

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